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Saturday, November 23, 2019

映画『決算!忠臣蔵』

【11月23日 記】 久しぶりに夫婦の好みがバッチリ一致して、2人で映画『決算!忠臣蔵』を観てきた。僕が大好きな中村義洋監督(今回は脚本も)。客席を見渡して妻が「ジジババ・オンパレード」と評したのはその通りだが、しかし大入り満員である。

日本人なら誰でも知っている(いや、若い人は知らないか?)忠臣蔵を、経済/経営学の観点から輪切りに刻んだコメディである。原作があるとは言え、それは小説でも戯曲でもなく、大石内蔵助が実際に残した決算書を東大教授が分析した研究書である。だから、筋運びは完全に中村オリジナルなのだ。

吉本興業が出資している関係もあって、吉本の芸人が多数出演しているが、普段の吉本芸人がやっているようなギャグやドタバタとは全く異なる知的な喜劇に仕上がっているところが本当に見事だと思った。

しかも、自ら歴史物が好きで豊富な知識を有する中村監督は、史実や歌舞伎や伝承に反するようなストーリーはほとんど書かず、書き込まれていない部分に自由な発想を注入して膨らませたと言う。このインテレクチュアルでクリエイティブな作業に、僕は敬意を評したい。

監督はプロデューサーから依頼を受けた際に、これは暴走する監督を抑え込むプロデューサーの映画だと言ったらしい。つまり、仇討ち・主戦派の堀部安兵衛らを、予算を司る「役方」の侍が抑え込む話だと言うのだ。この捉え方も面白い。

そして、筆頭家老の大石内蔵助は、大義と予算と自らの怠け癖を行ったり来たりして、場面場面であっちについたりこっちについたりする。この設定も面白い。堤真一は適役だった。

さらに、忠臣蔵だと言うのに吉良上野介が一切登場しないのがこれまた秀逸である。では、松之廊下での刃傷沙汰はどう描いたかと言うと、吉良の所謂“主観映像”なのである。これもかなり現代的な手法で、なるほどと感心した。

岡村隆史、木村祐一、板尾創路、西川きよし、桂文珍、村上ショージら吉本の芸人が多いこともあって、変な訛りの関西弁は聞こえない。他の役者陣も、兵庫出身の堤真一や上島竜兵、関ジャニ∞の横山裕、そして東京出身だが実は母親が姫路生まれという石原さとみなど、ちゃんと喋れる役者を多用したのも良かった。

それに加えて、中村組の常連である濱田岳、竹内結子をはじめ、妻夫木聡、荒川良々、阿部サダヲ、大地康雄、西村まさ彦、寺脇康文、滝藤賢一、笹野高史、近藤芳正、鈴木福、千葉雄大ら、まあ、この出し物ならオールスターキャストになるのは必然とは言え、豪華な顔ぶれである。

で、この顔は見たことあるけど誰だっけなあ?と思ったら、『蜜蜂と遠雷』で風間塵を演じていた鈴鹿央士だった。

しかし、それにしても堀部安兵衛が荒川良々というのは、凡人には思いつかないキャスティングである(笑)

1文=30円という換算で今の通貨で観客に値段を示し、事あるごとに内部留保金の増減を表示し、割賦金を退職一時金と称し、蔵之介が血判を同志に返して真意を探ったのをリストラと捉えるなど、こういう解釈による笑いはかなり高級なものである。

そういう観点で見ると、松之廊下は上野介にパワハラを受けた内匠頭がキレたシーンということになる(笑)

僕は改易お取り潰しと言えば藩士は無一文で放り出されるものと思っていたので、退職金が270万円も出たと知って驚いたし、忠臣たちが仇討ちを果たすまでには確かに資金難もあっただろうし、“武士の一分”と生活難との間で揺れ動き、末には脱落する同志も少なからずいて、かなりあたふたしたりもしたのだろうな、と大いに納得した。

中村監督はこれで『殿、利息でござる!』、『忍びの国』に次いで3本連続の時代劇となったが、これまでの作品がそうであったように、音楽や美術、カメラまで含めて、いずれも中村監督らしい、時代劇らしからぬ時代劇に仕上がっている。

なにしろ討ち入りシミュレーションの際の映像はあるが、討ち入り本番の映像はないのである(笑)

腹を抱えて笑ったりはしない。でも、めちゃくちゃ面白かった。でも、やっぱり次は現代劇を観たいな。

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