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Friday, September 20, 2019

HTB『チャンネルはそのまま!』

【9月19日 記】 『全裸監督』の記事を書いて思い出した。『チャンネルはそのまま!』の記事を書くのを忘れていた。

北海道テレビ(HTB)が開局50周年を記念して作ったドラマである。1Hもの×5話。北海道ローカルでは深夜枠で5夜連続で放送したが、全国ネットではたとえ深夜といえどもそんな枠は取れるはずもない。それで HTB は Netflix と組んだ。そのことによって恐らく少なからぬ額の制作費が調達できたはずだ。

いざ放送してみると非常に評判が良くて、所謂「番販」(番組販売)の形で各独立局やローカル局に広がり、僕は tvk が我が家では映らないので Tokyo MX での放送開始を待って漸く観た。

いやあ、面白かった、と思っていたら、今日民間放送連盟賞の最優秀賞を獲ったとのニュース。むべなるかな。

そもそもは佐々木倫子による漫画である。で、舞台となっている北海道☆テレビ(ほっかいどうほしてれび、HHTV)は HTB をモデルにしている。佐々木倫子は札幌在住で、何度も取材のために HTB を訪れたらしい。

地方局はあまりドラマというものを作りなれていないが、北海道局ぐらいになると、一般的に言って「ドラマを作ったことがない」ということはない。で、HTB には有名な藤村忠寿という人がいる。大ヒット番組『水曜どうでしょう』のプロデューサーであるのみならず、自ら舞台に立って演劇をする人で、映画にも出ている。

今回は5話のうち何話かを監督しているだけではなく、小倉部長の役で全話出ずっぱりである。公には語られていないが、どうやらこの小倉部長はそもそも藤村忠寿をモデルに作られた人物らしく、言ってみれば自分で自分を演じたわけである。

そして、総監督はこの番組のプロデューサーと親交のあった本広克行が務めている。「制作 Production I.G」というクレジットが出る。「なんでアニメ制作会社が?」と思う人もいるかもしれないが、本広は現在そこの所属なのである。ちなみに脚本は森ハヤシである。

ドラマは☆テレビの新入社員を中心に展開される。主人公は雪丸花子という女性で、本人は一生懸命なのだが、どうしようもなくトンチンカンで、周りからは「☆テレビの採用で伝統的に存在する『バカ枠』で入社した」と言われている。

でも、本人は何度失敗しても怒られても、全く悪びれず、常に明るく前向きである(が、一貫してトンチンカンである)。そこが笑える。この役を芳根京子が非常に好演している。

で、小倉部長からその「バカ枠のバカの世話係」と呼ばれるのが、新人離れした優秀な報道部員・山根(飯島寛騎)である。ほかにもどう見ても新人に見えない編成部員や綺麗でソツのない女子アナなど、いろんな同期社員と、キー局から出向してきて鼻息の荒い編成局長や、雪丸のダメぶりに頭を抱える報道デスクなど、バラエティに富んだ人物が配される。

芳根京子以外はあまり名を知られていない役者が多いが、そこは HTB のこと、TEAM NACS のメンバー全員が(恐らく友情出演的に)脇を固めている。ストーリーに大きく関係する農業支援活動家・蒲原に大泉洋が扮しているほか、☆テレビのライバルであるひぐまテレビの部長役の安田顕がめちゃくちゃおかしい。

他に有名なところでは根岸季衣や泉谷しげる、それからヨーロッパ企画の役者が大勢出ている。

ドラマはまず業界モノの体で始まり、多少業界薀蓄を交えながら、雪丸のハチャメチャぶりを面白おかしく綴って行く。そして、雪丸がとんでもないことをしでかすたびに、不思議に周りが(特に同期の山根が)納得し成長して行くという、なかなかヒューマンな仕立てだ。

そして、原作にはなかったオリジナル・キャラの蒲原がある種タテ糸となってストーリーをドライブして行く。

老朽化した☆テレビの社屋は、実は新社屋に引っ越した直後の HTB の旧社屋を全面的に使って撮影されており、それに対してピカピカのひぐまテレビは引っ越したばかりの HTB の新社屋である。そんなからくりもあって、(とある筋から確かな話を聞いたのだが)制作費もかなり安く仕上げている。

なかなか心温まるとはこのことである。まだ見ておられなくて見るチャンスがあれば、是非とも見てほしい。ちなみに僕は永久保存版として Blu-Ray にムーブした。

これが連盟賞を獲ったというのは良いニュースだと素直に思う。

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