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Monday, September 23, 2019

映画『HELLO WORLD』のラストシーンについて

【9月23日 記】 試写会で先に観た映画『HELLO WORLD』が公開されたので、少し書いてみる。ネタバレは書かないつもりなので、これからご覧になる方が先にお読みになるのも良いし、見終わってからお読みいただくのでも良いと思う。

あの映画のキャッチフレーズは“この物語(セカイ)は、ラスト1秒でひっくり返る”である。

確かにあのラストシーンの最後のカットで「えっ?」となることは間違いない。「えっ?」で済んだら良いのだが、ま、中には「えっ、えっ、えー???」という人もいるだろう。

いろんな解釈が出てくる。そして、観た者が集まって話をしていると、「あ、なるほど、そういうことか」という線に大体落ち着いてくる(それが何か、まではここでは書かないけど)。

で、みんなで話していて驚くのは、「あのラストシーンはないほうが良かった」と言う人が少なからずいることである(僕の周りではそういう人たちのほうが多数派かもしれない)。彼らは言う。「あれで訳が分からなくなる。あれがなくても話は完結している」と。

僕は驚く。確かに完結しているかもしれない。でも、その後あのラストがあるからこそこの映画に深みが出るんじゃないか。確かにあれがあるからややこしくなる。でも、ややこしくなるから良いのである。

一旦完結したかに見えた世界が再び不安定になる。でも、世界が完結せず、安定性を欠くからこそ余韻が残るのである。そして、僕らの世界は現実にそういう進み行きをしているではないか?

みんなどうしてそんなに分かりやすいものを求めるのだろう? どうして丸く収まることに満足するんだろう?

もちろんいろんな感じ方があって良い。それに、僕は小さい頃から自分が少数派に属することに喜びを感じてきたから、今回も「いや、僕はそうは思わない」と言っていれば、自分としての満足感は得られる。でも、今回ばかりは、「そういう発想の人が増えてきて日本は大丈夫なんだろうか?」とちょっと心配になる。

そもそもストーリーというものは丸く収まるほうが良いのか? あまりに分かりやすいものばかりを求めていると、単に安易で、本来進むべきではなかった方向に進んでしまうことにならないか? 

さて、ことほどさように、このラストの扱いについてはいろんな意見がある中で、ある人がこう言った。「あのラストシーンはエンドロールが終わった後に出したほうが良かったね」と。ああ、それは確かにそうかもしれない。そっちのほうが収まりが良く、そっちのほうが驚きが大きく、そっちのほうが余韻が深かったかもしれない。

まだご覧になっていないのであれば、是非ご覧いただきたい。あなたはどう感じましたか?

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