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Saturday, August 31, 2019

映画『火口のふたり』

【8月31日 記】 映画『火口のふたり』を観て来た。

原作は白石一文の同名の小説。監督・脚本は荒井晴彦。

柄本佑と瀧内公美がずっとセックスしている映画だ。背景と映り込み以外では他に誰も出てこない。堂々たるセックス映画。

撮影はベテラン川上皓市。カメラはほとんど動かない。

いや、全く動かないわけではなくて、時々振ったり寄ったりはするが、寝室のシーン(そして、この映画の大半は寝室のシーンだ)ではほとんど固定の画だ。

長めのカットを積み重ねて、ふたりに長い会話を交わさせ、終わることのない、激しい、あられもないセックスを演じさせる。

時代が変わったということもあるが、これら一連の性描写は、例えば往年の「にっかつロマンポルノ」で許されていたレベルを、衒いも力みもなく超えている。

これ、ほんとにやってるんじゃないの? ほんとに気持ちいいんじゃないの? と思うくらい。

賢治(柄本佑)と直子(瀧内公美)はいとこ同士で、身寄りのなくなった直子を賢治の両親が引き取ったために一つ屋根の下で育った。

そして、賢治の後を追って直子も上京して、ふたりは肉体で結ばれた恋人同士になった。

やがてふたりは別れ、賢治は結婚と離婚を経験した。

ある日父親(柄本明、声のみ)からの電話で、賢治は直子が結婚すること、そして結婚式に来てほしいと言われていることを知る。

失業中の賢治は何日も前に帰郷するが、そこに直子が現れて、テレビを買って新居に運ぶのを手伝わされる。

それから、俗な言い方をすれば、焼け木杭に火がついて、昔みたいにセックスに明け暮れる日々が始まる。直子の結婚相手は自衛隊のエリートで、出張のため暫く帰ってこない。

ここまで読んでそんな映画見たくないと思った人もいるかもしれないが、この映画は文字で読む説明よりも遥かに深い。

悪し様に書けば、結婚前の女性が離婚した元彼と淫行を繰り返す話だが、この映画を観ていると、何と言うかな、男も女も、ああ、そういうことあるよな、と思うのだ。

僕は原作は読んでいないが、白石一文は好きな作家で何冊か読んでいる。原作を読まずにこんなことを言うのもアレだか、この映画は原作とはかなり違ったトーンになっているのではないかと思う。

そう、これはまさに荒井晴彦のトーンなのである。震災や、あるいは広く天災を絡めて人間や社会を描いているが、だから素晴らしいと言うわけではない。

どの部分が素晴らしいと、小さな形で指摘できない、まさにトータルとしての台詞回しの妙と演出の力、全体をコントロールする技量である。

この映画は単に性を描いているのではない。愛を描いているのでもない。そこで描かれているのは微動だにしない性愛である。

そこがこの映画の抜きん出たところだ。とても印象の深い映画だった。

賢治と直子の営みを観て、彼らの「体の言い分」を聞いてほしい。

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