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Monday, July 15, 2019

映画『凪待ち』

【7月15日 記】 映画『凪待ち』を観てきた。

白石和彌監督にもそろそろ飽きてきたので、この映画はパスしても良いかなとも思ったのだが、観て良かった。今までなかった白石和彌だと言うのではない。見事に白石和彌らしい、まさに白石和彌ワールドなのである。

主人公の郁男(香取慎吾)はどうしようもない男である。お金があったら全部競輪につぎ込んでしまう。お金がなくなると同棲している亜弓(西田尚美)のお金をくすねて競輪につぎ込んでしまう。

その郁男が、亜弓の娘で高校にも行かず引きこもっている娘の美波(恒松祐里)と3人で、亜弓の故郷の石巻で人生を出直すことになる。郁男と亜弓は婚姻届を出していないが、美波は郁男に結構懐いている。

石巻には亜弓の父・勝美(吉澤健)がひとりで暮らしている実家がある。勝美は漁師だが、東日本大震災の津波の際に逃げ遅れた妻を救えなかったことで自分を責めており、ステージ4の癌で余命幾許もない体で毎日海に出ている。

郁男は近所の親切な男・小野寺(リリー・フランキー)に印刷所の仕事を世話してもらい、近隣には競輪場もないのでやっとこれでやり直せるかと思ったのだが、やがて同僚に連れられて行ったヤクザのノミ屋に通うようになってしまい…。

という話だ。そこから先は郁男がどんどん堕ちて行く。ちょっと気持ちを切り替えたら抜け出せたかもしれないのに、どんどん深みに嵌って行く。

その上、ある日、亜弓と喧嘩して家を飛び出した美波のことで亜弓と口論になり、腹立ち紛れに乗っていた車から「降りろ」と言って置き去りにしたら、そのあと亜弓は殺されて死体で発見される。

とんでもなくやるせない話である。さびれた北の町で、郁男の心はどんどん荒んで行く。いや、そもそもこの街に着いた最初の夜にバーで見知らぬ男(音尾琢真)に軽く絡まれるところからしてすでに禍々しい感じが拭えないのである。

で、この話をどこに持って行くのか、どうやって話を終えるのか──その一点で映画作家は感性と力量を問われることになる。

ある日心を入れ替えて、郁男も他のみんなも幸せになりました、では終わらない。いや、いつまでたっても映画が終わりそうもないくらい、郁男は次々に泥沼に嵌って行く。

物語は非常にストイックなトーンと映像で語られる。しかし、ストーリーは終わるかと思うとさらに新たな展開があり、どこまでも僕らは引きずり回される。いくら待っても凪は来ないのである。

吉澤健と恒松祐里が素晴らしい。

映画作家としての答えがこの映画の結末にあると思う。いや、結末ではなく映画全体が答えなのである。いや、答えではなく問いかけなのかもしれない。

凪は来たか? 果たしてこれが凪なのか? 凪は所詮いっときの現象なのか?

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