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Wednesday, July 31, 2019

音楽に対する情熱

【7月31日 記】 僕が小学校高学年から中学ぐらいにかけて、歌を捨てて俳優に転じた歌手がたくさんいた。

それはブームの過ぎたグループ・サウンズの残党であったり、キャラクターを買われたフォーク・シンガーであったり、他にもいろいろなケースがあっただろうし、俳優だけでなく他のタレントに転じた歌手もいた。

そして、中には歌手と俳優の二足の草鞋を履いて歩いた(しかも両方で成功した)人もいるが、音楽を完全に捨ててしまったような(でも、逆に言うと音楽以外の道でちゃんと成功した)人もいた。

当時の僕はそういう人たちを心の底から軽蔑した。「お前らの音楽に対する情熱って、所詮そんなもんだったのかよ」と。それほどまでにフォークやロックに心酔していたとも言えるが、中学生らしい幼稚な考え方だとも言える。

当時の僕には「生きて行くためには稼がなければならない」という発想が全くなかったのだ。まあ、中学生の想像の範囲を考えると、仕方がないと言えば仕方がないが。

僕はそのことに漸く最近になって気づいた。いや、さすがに昨日、一昨日に気づいたわけではないが、多分ここ10年以内ぐらいじゃないかな。

今やっている仕事で食えなくなったら他の仕事を探すのは当然だ。歌手みたいな不安定な職業に就いているとなおさらそうだ。歌が売れなくなったら俳優のオーディションだって受けるだろう。歌手としての将来に獏とした不安を感じている時に、「役者をやってみないか」と言われたら「やってみようか」という気にもなるだろう。

そんな僕も、さすがに高校・大学になると、そういう狭量さからは抜け出した。「別に音楽だって芝居だって、何だって自分の好きなことをやれば良いんだ」と言うくらい、自分の自由と同様に他人の自由も尊重できるようになった。

でも、そこにはまだ「とにかく食うためには何だってやらなければならないんだ」という切実な実感がなかった。そして、社会人になってからも何故か長らくそのことに気づかなかった。

サラリーマンの晩年に、漸く、「そうだったのか! 彼らはそのまま歌手を続けていたら、文字通り野垂れ死にしていたかもしれないんだ」と気づいた。

気づいてよかった。歌はアマチュアでも歌える。生きるための職業と楽しむための趣味を両立させている人はたくさんいる。

逆に言うと、音楽というものはそれほど深く、広いものだということだ。この歳になって漸く音楽の真髄に気づいたような気がする。

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