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Monday, June 03, 2019

映画『ウィーアーリトルゾンビーズ』先行上映イベント

【6月3日 記】 電通デザイントークというイベントで『ウィーアーリトルゾンビーズ』の先行上映を観てきた。

長久允(ながひさまこと)監督は電通の社員である。まだ34歳。

行き詰まって有給休暇を取っていたときに、たまたま見た「女子中学生4人がプールに金魚500匹を放して自分たちもそこで半裸で泳いだ」というニュースに着想を得て作った映画が『そうして私たちはプールに金魚を、』だった。

もともと学生時代から映画を作っていた人で、映画の夢を諦めて電通に入り、CMクリエイタとしてそれなりに実績を積んできたが、次第に CM が苦手だと思うようになり、CM をドロップアウトして映画を作ったと本人は言っている。

で、この映画がいきなりサンダンス映画祭のショートフィルム部門でクランプリを受賞した。日本人としては初の快挙である。そして、今回の映画が2作目であり、長編デビューでもある。この映画もサンダンスとベルリンで賞を獲っている。

あらすじをあまり書いても仕方がない映画だと思うが、とりあえず少し書いておく。

主人公は男子3人、女子1人の中学生。同級生ではない。たまたま同じ時期に両親が亡くなり(バス転落事故、火事、自殺、殺人事件)火葬場で出会った。4人はそのままドロップアウトしてしまう。

と言っても、中学生のことだから行くところもなく、まずはそれぞれの家(焼け跡も含めて)を回る。それから行き場を失ってゴミ捨て場でたむろしていたときに、ひょんなことからバンドを組むことになり、それがひょんなことから大人の目に留まり、デビューが決まり大ヒットとなる。

全編がゲームになぞらえられた構成になっており、途切れなく流れる音楽も効果音もまるでゲームである。

見始めてすぐに思ったのは、これは今までの映画の文法では作られていないな、ということ。視点が全然違う。ここで言う視点とは着想のことではなく、文字通りどこにカメラを置くか、どんな構図でどんなサイズで切り取るか、そしてそれをどのように繋いで行くか、というようなことである。

色彩も音楽もとてもポップで、テンポが半端なく良くて、展開もアナーキーである。かと言ってうるさいだけの作品ではない。僕はこの映画の中で3回出てきた「エモい」という表現がこの映画を評するのに一番適切なのではないかと思う。

映画の中では「エモい」と誰かが言うたびに必ず「古い!」とツッコミが入っていたが、それは監督のテレなんじゃないかな、と(笑)

主人公の少年を演じた二宮慶多は(僕は全く思い出せなかったが)『そして父になる』で福山雅治の息子を演じた子役である。そして、少女役は(どこかで見覚えがあると思ったら)『クソ野郎と美しき世界』に出ていた中島セナである。

この4人の少年少女のある種のロードムービーだと言っても良いと僕は思うのだが、脇を固める大人たちにいずれも素敵な俳優たちが名を連ねている:佐々木蔵之介、工藤夕貴、池松壮亮、村上淳、西田尚美、佐野史郎、菊地凛子、永瀬正敏…。

試写が終わってから、長久監督と、電通での同期である CMプランナ/ディレクタの佐藤雄介氏との対談があったのだが、これがとても面白かったし、この映画を理解する上での助けにもなったし、これで長久監督の人となりも分かった。Nagahisa_makoto_1

この対談について書き始めると長くなるので、ここで聞いて驚いた話をひとつだけ書いておくと、この映画は通常の映画のように、まず脚本を書いて、ロケハンをして、役者に来てもらって、リハーサルをして、という手順では撮っていないのだそうだ。

監督はまず自分で台詞を朗読し、BGM を作り上げて(作中歌の何曲かは、昔音楽もやっていた長久監督自身の作詞作曲である)当てはめて行き、まず音だけを繋げて完成し、カット割りも完全に作り上げてから、初めてその音に合わせて役者に演技をしてもらったとのこと。

だからこそこのスピード感が出るのであり、こんなにもぎゅうぎゅうに詰め込んだ映像ができるのである。最初にカット割りが全部決まっているので、セットも映り込む部分だけを作るのだそうだ。

そして、この対談で長久監督は如何に自分が行き詰まっていたか、思いつめていたか、そして今は何を描きたいかをいうことをいろいろと語った。

ヒゲ生やして、髪は三つ編みだし、短パン姿だし、その格好で撮って twitter のアイコンなどに使われている写真は目がイってる感じもあって、ともすればかなりエキセントリックな印象を持ってしまうのだが、この人はとても心優しい真面目な人だった。

そんな監督の人格がしっかり溶け込んだ良い作品だと思った。6/14(金)公開。

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