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Sunday, June 02, 2019

映画『さよならくちびる』

【6月2日 記】 映画『さよならくちびる』を観てきた。塩田明彦監督。

『月光の囁き』(1999年)や『ギプス』(2001年)を観て、すごい監督が出てきたと思った。そして、『黄泉がえり』(2003年)や『カナリア』(2005年)を観て、こういう商業作品的なものも撮って段々大御所になって行くんだなあ、と思っていた。

ところが次の『この胸いっぱいの愛を』(2005年)に大いに失望して、僕が観たのはその次の『どろろ』(2007年)が最後になってしまった。塩田明彦のほうもややペースダウンして、その後は3本しか撮っていない。

僕にとっては12年ぶり塩田明彦である。女の子2人のフォーク・ギター・デュオ“ハルレオ”の物語だ。

メンバーはハル(門脇麦)とレオ(小松菜奈)。2人は勤務先のクリーニング工場で出会い、前から歌を歌っていたハルが全くどんな人間か分からないレオに「あたしと一緒に音楽やらない?」と声をかける。後からレオがその時の理由を訊いたら「歌いたそうな目をしていたから」とハルは答えた。

映画の冒頭では、ハルレオはインディーズではそこそこ人気のある存在になっているが、実は解散が決まっている。これから浜松・四日市・大阪・新潟・酒田・弘前・函館の全国7箇所のライブハウスを巡るツアーに出ると言うのに、ハルとレオは互いに険悪な雰囲気で車に乗り込む。

車を運転するのはローディ兼マネージャ兼サポートメンバーとしてエレキギターも担当するシマ(成田凌)だ。シマの前職はホストだが、ハルレオの初期にハルの歌に惚れ込んで志願してきて雇われた。

車中でハルとレオが罵り合う。最初はなんでこんな険悪なムードなのか観客には分からない。

レオはハルに拾われたような形で音楽を始めた。ギターも一からハルに教わった。ハルレオのレパートリーは全てハルの作詞作曲だ。だから、レオには自分は添え物だというような意識がある。ハルがどれをほどレオのことを愛しく思っているかが分からない。

レオはシマに惹かれている。でも、シマが好きなのはハルで、ハルにはその気がない。そんな三角関係もあり、3人それぞれが今までの人生で抱え込んでしまった問題もあり、3人の気持ちは時々すれ違う。でも、どんなに喧嘩しても、どんなことがあっても、ステージに穴を開けたことはないし息も合っている。

ロードムービーである、3人が7箇所を巡る。途中で誰かが脱落することもあるが、ライブ会場ではひとつになる。やがて解散の噂が流れてしまい、逆にライブは盛り上がり、ソールドアウト続出になる。

門脇麦と小松菜奈のギターと歌ばかりが宣伝材料になっているが、ほぼこの3人だけで綴られる芝居の部分がかなり良い。長めのカットで緊張感のある芝居がじっくり観られる。小松菜奈は大好きな女優で、門脇麦は好きではなくて、成田凌には最近注目しているが、3人が3人とも本当に素晴らしい。

塩田監督オリジナルの塩田監督自身による脚本が素晴らしい。台詞で説明したりしない。それどころか登場人物の本心とは正反対の台詞を言わせて、それでも芝居全体で登場人物の気持ちをしっかりと伝えてきている。かなり良い。

中で歌われる作品は秦基博がタイトル曲を、他の2曲をあいみょんが手がけており、これも良い。残念なのは2人のボーカルが1曲を除いてユニゾンであること。でも、『さよならくちびる』の小松菜奈のコーラスワークは却々捨てたもんじゃない。

さて、この映画どうやってケリをつけるのかと興味津々でラストシーンを待っていたら、なるほどそう来たか! なんじゃそれ、という人もいるんだろうが、その“なんじゃそりゃ感”が後口の良さに繋がっている。

久しぶりに塩田明彦の力量をまざまざと見せてもらった気がする。

なお、映画館を出てから今に至るまで、脳内で『さよならくちびる』が無限ループしているのは言うまでもない。

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