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Tuesday, June 04, 2019

連続ドラマW『坂の途中の家』全6話

【6月2日 記】 WOWOW の連続ドラマW『坂の途中の家』全6話を見終えた。

そもそも僕は WOWOW ではもっぱら単発のドラマWを見ており、それが連続ドラマ化するのは歓迎していなかった。理由は単純で、地上波のほうでレギュラーで見ているドラマがあるので、それにプラスして WOWOW で毎週見る余裕がないということだ。

ところが、今では WOWOW のドラマは全4話~8話ぐらいの連続ものが中心である。WOWOW の人に聞くと、連続ドラマにしたほうが単発よりも遥かによく見られるのだそうだから、仕方がないことである。

とは言え、見る余裕がないことには変わりがないので、今まであまり連続ドラマW は見てこなかった。今回見るに至った理由もこれまた単純で、角田光代の原作小説を夫婦揃って読んでいたからだ。それでテレビドラマも夫婦揃って見ることになった。

その結果、この6週間、我々夫婦にとって土曜の22:00~23:00 という時間はものすごく気が重くなる時間になった。いや、ドラマが終わってからしばらくは(多分日付が変わってからもしばらく)我々夫婦はどんよりとした気分から抜けられなかった。

原作を読んでいるのだから、そんな話であることは先刻承知なのだが、ともかく暗い。

育児ノイローゼから娘を殺してしまった母親の裁判の補助裁判員に選ばれてしまった主人公の女性が、自分も似た境遇にあることから、被告人をどんどん自身に投影してしまい、抜け出せない負のスパイラルに陥ってしまうという内容なのだが、そういう内容であるために、我々視聴者もどことなく登場人物を自分に投影してしまって暗い気分になるのである。

主人公を演じたのは柴咲コウ。子どもを殺した母親役が水野美紀(全編ノーメイクだった)。柴咲コウの夫に田辺誠一、母親に高畑淳子、夫の両親に光石研と風吹ジュン。みんな上手いから見ていて息が詰まりそうになる。

そして、息が詰まりそうなのは主人公の環境だけではない。同じ裁判の裁判員になった子どものできない女性、浪費癖のある妻を持つ男性、夫が子育てに協力してくれない裁判官などなど、あっちもこっちもみんな問題を抱えているのである。

監督は森ガキ侑大。映画『おじいちゃん、死んじゃったって。』の監督である。あの映画も実は登場人物の多くがそれぞれに問題を抱えていた。こういう設定を巧くこなして行く監督なのかもしれない。ただ、あの映画よりこのドラマのほうが遥かに暗くて重い。

脚本は篠崎絵里子。最近だと TBS の『THE GOOD WIFE』や映画『人形の家』など、これまたドロドロの愛憎劇ばかり。

さて、いつものことながら、ちょうど2年前に読んだ原作が最後はどんな終わり方をしたのか、思い出そうとしても全く思い出せない。テレビを見ながら「こんな話だったっけ?」と何度も首をひねったのだが、いつもはそんなことをよく憶えている妻が今回に限って記憶が定かでないらしいので、よく分からない。

ただ、ドラマを最後まで見てしまうと、ここまで暗く、重苦しく引っ張ってきた話を、最後になってあまりにきれいにまとめすぎ、全ての要素を片付けすぎのような気がした。これが原作通りなのか、そうでないのかは知らないが…。

もちろんそういう展開だから全6話の最終回になって漸く救いが得られるのではあるが、ドラマに於いてここまでの救いが必要だったのかどうか、と僕は考えてしまう。現実には救われないまま地獄に堕ちて行く人もいるわけだから…。

いや、救いのないまま終わっていたら、僕はこのドラマを酷評していたかもしれないし、こういう展開だから見ていた僕も呪縛から抜け出せたのかもしれないが、でも、やっぱりそういうところが少し引っかかった。

とても上手に作られたドラマではあった。そして、とても考えさせられるドラマであった。それはそのドラマがよくできていた証拠ではある。

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