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Monday, April 29, 2019

NHK BSプレミアム『スローな武士にしてくれ〜京都 撮影所ラプソディー〜』

【4月29日 記】 久しぶりにテレビで見たドラマについて書く。録画したままになっていた NHK BSプレミアムの『スローな武士にしてくれ〜京都 撮影所ラプソディー〜』。さすがにあちこちで激賞されているだけのことはあって、めちゃくちゃ面白かった。

僕は時代劇なんぞというものにこれっぽっちも思い入れはないが、世の中には時代劇オタクと言われる人がいる。

また、全然別の話だが、テレビ局には最新の撮影機器を使って今まで誰も撮らなかったような斬新な映像を撮りたいと日夜構想を練っている制作技術マンがいる。

この2人が同一人物だったとしたら──それがこの映画の狂言回し役の田所新之助(柄本佑)である。帰国子女、MIT出身、NHK勤務(技術ラボ主任)。

恐らくこの番組を企画した人も田所と同じような指向性の持ち主なんだろうと思う。でも、当たり前の発想をしていたら、単に最新の撮影機器を使って時代劇を撮るだけで終わっていたはず。それをここでは最新の撮影機器を使って時代劇を作るスタッフと役者のドラマという複雑な構成にした──それが大成功である。

そういう構成にすることによって、視聴者に対して最新撮影機器の説明を堂々と入れることができる。「これはこんなカメラだぞ、ここがすごくて、でもしんどいのはこういうところだ」と説明してから、実際に撮影した映像を眼前に展開できる。──だから、普段はそんなことに気づいていない観客も瞠目して感心することになる。

ドラマの設定も秀逸である。

NHKの田所が「京映」の太秦撮影所の所長・八村(伊武雅刀)に最新撮影機器を駆使したパイロット版の時代劇の制作を依頼したところからドラマがスタートするのだが、このドラマの主人公は大部屋俳優のシゲちゃんこと村田茂雄(内野聖陽)である。

斬られ役一筋30年。殺陣の腕前は問題なし。里見浩太朗(里見浩太朗本人)から斬られ役に指名されるほどの実力者なのだが、台詞が苦手でいつも緊張して声が裏返ってしまうためいつまでも大部屋から抜け出せない。

剣心会の同僚であり友人でありライバルなのが城ちゃんこと朽木城太郎(中村獅童)。そして、城太郎がかつて恋心を抱いていた往年のくノ一女優(水野美紀)が今や茂雄の妻となって、茂雄の家の団子屋を切り盛りしている。

さて、八村がかき集めたのは国重五郎監督(石橋蓮司)以下の国重組。いずれも往年の名スタッフだが、はっきり言って今はロートルばかり。

カメラマンの武藤(本田博太郎)や録音の玉村(佐川満男)、照明の町田(浜田晃)、殺陣師の大河原(モロ師岡)らが田所が持ち込んだ機器を前に右往左往するさまが面白おかしく描かれる。

彼らが撮るのは幕末の新選組もの。たかがパイロットもので大物役者に偉そうに言われるとたまらんし、台詞もないという理由でが茂雄が近藤勇役に抜擢される。そして、スタッフは今まで一度も経験したことがない、ドローンあり、スーパースローあり、ワイヤーアクションありと、ハイテクの限りを尽くした映像づくりに挑む。

ドラマとしても(大した起伏はないけれど)しっかりとまとまっており、撮影の裏側的な情報もたっぷりで、これは海外で上映したら何か賞が撮れるかも知れないと思った。

さて、こんな面白い構成を一体誰が思いついたのか? 誰が脚本を書いて誰が監督したのだろうか? と気になってエンドロールを凝視していたら、「作・演出」としてクレジットされていたのは源孝志。

ああ、映画監督としては残念ながら高い評価が得られなかった人、という認識でいたのだが、調べてみたら、ここ数年、NHK BSプレミアムでの作品が数多く並んでいる。こんなところで生きていたのか。

尺はテレビ向きに 119分になっていたが、これ、2時間半ぐらいに編集し直して映画館でもう一度観たいなと思った。

唯一の難点は、京都が舞台なのに、よくまあこれだけ関西弁を喋れない役者を集めたな、ということ。まともに喋っているのは水野美紀ぐらいのもので、とりわけ本田博太郎が気持ち悪くて仕方なかった(笑)

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