samorost3
【3月7日 記】 妻が Samorost3 を最後までやりきった。
彼女の誕生日プレゼントに iPad にダウンロードしておいたのだが、却々気づいてくれず、でも、やり始めると一気に熱中モードに入り、ほぼ半年で完遂した。僕もそのうちの7割ぐらいはいっしょにやったり、その場で見ていたりした。
所謂 non-verbal game である。言葉はいらない。言葉がなくても分かる。──というのは正しくもあり正しくもない。確かに言葉がなくても何となく分かる気はするが、すぐには分からない。あくまでやっているうちに少しずつ分かってくるのである。
そもそもゲームというものにはルールがあって、それを大体解った上で始めるものであるが、ルールブックもマニュアルも何もなくいきなり始めるわけだから、暫くは360°全方向に手探りで、何を最終目的として、何をそのための手段としてやっているかも判らず、やりながら掴むしかないのである。
で、やって行くうちに、あ、このマークがあるところではこうすれば良いのか、こんな反応をされたときは自分がやっていることが間違っているのか、こういうヒントは多分この方向性で推理すれば良いのかと見当がついてくる。
でも、あまりにも難しいので、途中何度かネット上にある攻略法の記事のお世話になった(つまりは、カンニングしたわけである)。ただ、難しいから、謎が多いから楽しい、というだけではない。ゲームという枠組みに入る前に、すでに絵と音だけでめちゃくちゃ楽しくて胸踊るのである。
何しろこの主人公(僕らは彼を Samorost と呼んでいたのだが、どうやらそうではないみたいだ)、アイテムをゲットして嬉しいと飛び跳ねるなんてのは当たり前として、退屈するとあくびはするし、意味もなく足をスリスリしたり、音楽がなると踊り出すし、ゲームの進行に対して無駄な動きがめちゃくちゃ多くて、そこが楽しい。
主人公のほか大勢のヒトや虫や獣や化物やロボットや、いろんな奴が出てきて、口々に何かを言っているが、これは我々日本人にも、あるいはフランス人にも、タンザニア人にも何を言っているかは分からない。
いろんな星を旅するのだが、それは宇宙船が出来上がって初めて「あ、これに乗ってどっかに行くのか」と分かる。その宇宙船も、まさかこんなものとこんなものを組合せてもできないだろうと思う組合せでできてしまう。
白い線描画でヒントが出てくるのだが、何のことだか判らず、でも、それを引っ張ったり丸めたりぐるぐる回したりしてみたら意外なことが起こったり起きなかったり。
何よりもすごいのは音楽の要素。昨今では音痴の人をほとんど見かけなくなったが、このゲームは昔はクラスにひとりかふたりはいた音痴の人には到底無理な要素があって、つまり、聞いた旋律を覚えて再現できる音楽的な耳がないと先には進めない。
僕も妻も幼い頃からあまりゲームには親しまずに育ってきた。だが、共通にハマるゲームはあって、例えばこれまでは MONUMENT VALLEY に熱中してきた。これも non-verbal ゲームだ。
でも、こちらの主人公は Samorost3 ほど感情豊かでも茶目っ気があったりもしない。こちらのゲームにおいてはだまし絵的なパズルの面白さが本質である。
MONUMENT VALLEY をやり終えて、MONUMENT VALLEY 2 はまだ最後まで行っていなかったのだが、途中で Samorost3 に全面乗り換えしてしまい、そのまま最後まで突っ走ってしまった。多分このあとまた元のこのゲームに戻って行く。
MONUMENT VALLEY の体験があったから、Samorost3 を知ったとき、僕は絶対妻もこれにハマるだろうと確信を持った。果たしてそのとおりだった。とにかくこんな面白いゲームは今までなかったし、これからも出てこないように思う。
これは完璧な世界観と表現力で閉じた世界を構成する綜合藝術である。一度入り込んだら抜け出せない(笑) もちろんみんながみんなハマるゲームというものは多分ないんだろう。だが、これにハマるタイプの人は僕と妻以外にもたくさんいると思う。
良かったらやってみる? 時間はかなり食うよ(笑)
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