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Wednesday, February 27, 2019

『爆発的ヒットは“想い”から生まれる』境治(書評)

【2月27日 記】 タイトルが非常に明快に本の内容をまとめている。ただし、これはマニュアル本でもノウハウ本でもないので、その点はご注意。

僕は著者の境治さんとは面識があるだけではなく、境さんが主催している「ミライテレビ推進会議」のメンバーであることもあり、また関心領域も近いので、その会議だけではなく月に1~2回はいろんなところでリアルに顔を合わせているし、ネット上まで含めるとほぼ毎日何らかの接触があると言える。

だから、もう何年にもわたって、境さんの話をセミナーで聴いたり、ネット上の様々なサイトで読んだり、時には直接会って意見や情報を交換したりしているので、実はこの本に書いてあることで初めて見聞きしたことはほとんど、いや、全くないと言い切っても過言ではない。

でも、この本の秀逸なところは、境さんがいろんなところで書いたり言ったりしてきたことが網羅的に収められているということではなく、それらが本当に見事なぐらい有機的に繋がっているということだ。

ここでは、出てくる順番に書くと、『半沢直樹』、『逃げ恥』、『おげんさん』、『おっさんずラブ』、『シン・ゴジラ』、『君の名は。』、『この世界の片隅に』、『カメ止め』、「日本死ね」、「文春砲」などが取り上げられており、それらが何故、どのようにして多くの人に広まり、受け入れられたかが、かなり詳細に、かつしっかりとデータや事実に基づいて語られている。

僕はこれらそれぞれを漏れなくどこかで見聞きしてきて、それぞれに感銘を受けていたが、しかし、これらが“想い”というタームでひとつにまとめられるとは予期していなかった。多くの知見をまとめて1つのコンセプトに括る──そういう作業こそが人間の知の営みと呼べるのではないだろうか。

そして、この本を読んでいて、はからずも思い出したのは、佐藤尚之(さとなお)さんの『ファンベース』という本だ。境さんとさとなおさんという、ともに僕が面識のあるお二方の間に、果たして面識や交流があるのかどうか分からないが、僕の頭の中でこの2つの論旨がかなりしっくりと繋がってしまった。

本を読んでいて、こんな風に自分の読書体験が繋がって行くこともまた、人間の知の営みの嬉しい一例である。

大ヒットのキーワードは“想い”と“コミュニティ”である。そして、この本の中ではそれほど強調されてはいないが、“メッセージ”の重要性も欠かせない。「人と人との体温のあるつながりが、結局ヒットをもたらす」という表現もある。

さとなおさんにしても境さんにしても、僕はネット上で繋がった。さとなおさんは当時書いておられたホームページを読んでメールを出したのがきっかけ、境さんについては僕が twitter で彼の著書を褒めたら本人が絡んできたのが最初だ。

そういうのが“想い”の第一歩であり、ひょっとすると大ヒットの萌芽なのかもしれない。この本はそんなことをしっかりと実感させてくれた。

ただひとつだけ苦言を呈すると、この本はいたるところに赤色の傍線が引かれている。ここが大事だぞと教えてくれるのは大変ご親切ではあるが、本を読みながらどこに傍線を引いたりマーカーで塗ったり付箋を付けたりするかを選択するのも、これまた人間の大切な知の営みであり、赤線は余計なお節介である。

読者の自由を奪うのは金輪際やめていただきたい(笑)

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