食べ放題のうち
【2月21日 記】 いくつになっても健啖家、というような人もいるにはいるが、僕の場合はご多分に漏れず、年を取るにつれてあまり量が食べられなくなってきた。
もともと体育会系でも大食漢でもなかったのは確かだが、それでも10代、20代の頃はほぼ無意識に「大盛り」を注文していたように思う。
それが今は大盛りどころか普通盛りでも多いくらいだ。
メニューに「小ライス」とか「ご飯少なめ」とかいう選択肢があれば良いのだが、あるいはメニューには載っていなくても、店の人と顔なじみで気軽に「ご飯少なめで」とか言える雰囲気だったら良いのだが、そうでなければやはりわざわざそういうオーダーをするのは、僕らの世代はためらってしまうのだ。
何故なら僕らの時代はとにかく出されたものは何であれ全部きれいに平らげるというのが礼儀だったから。そこには自分の腹具合とか好き嫌いとか、そういう尺度も選択肢もなくて、ただただ作ってくれた人、振る舞ってくれた人に対する感謝の意を表して初めて食事という儀式が完結するのだった。
というわけで、簡単に言うと、こっちが金払ってんだから大盛りであれ半ライスであれ好きなものを注文して好きな分だけ食べれば良いものを、それが気安くできないもんだからウジウジしているという馬鹿らしい話でもある。
それで最近覚えたワザがある。
それはビュッフェ形式の食べ放題の店。食べ放題というのは一般的には固定料金で食べれば食べるほどコスト・パフォーマンスを上げられるという仕組みのものであるが、僕はそれを逆手に取って、固定料金を払って誰にも気兼ねすることなく、ご飯もおかずも少しだけ食べるのである。
これなら誰にも何もお願いする必要はない。こっちが金払ってんだから、いくら食べなくても俺の勝手だろ、と胸を張って言える気がする。
最近そういう店でよく食べている。これも食べ放題のうちだろうと思いながら。
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