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Sunday, February 03, 2019

映画『あした世界が終わるとしても』

【2月3日 記】 映画『あした世界が終わるとしても』を観てきた。

監督は櫻木優平。岩井俊二監督の『花とアリス殺人事件』のアニメーション監督として頭角を現し、『イングレス』をアニメ映画化した人。制作会社は博報堂系列のクラフターで、なんでも「スマートCGアニメーション」という技術を使っているらしい。

その辺のことをもっと知りたかったのだが、パンフレットが売り切れていたこともあってよく分からない。ただ、確かにアニメの動きが違う。アニメは動画であるが、部分的には人物であれ背景であれ、静止している画像が含まれているものだ。それが全くない感じがするのである。

でも、実際の人間の動きと同じくらい自然かと言うと、いや、そんなことはない。むしろ、超えられない「不気味の谷」の存在を強調した感もある。しかし、動きは驚くほどスムーズなのだ。

さて、話としては、乱暴に言ってしまうとパラレルワールドものなのだが、一方の世界が他方を征服して支配しようとする物騒な様相を呈してくる。

主人公は狭間真(はざましん、CV:梶裕貴)。小さい頃に当時から世間を騒がせ始めていた原因不明の突然死で母が亡くなる。民間企業の研究開発部門に勤める父は、その日以来研究に没頭してほとんど家にも帰らなくなる。

その父の勤め先の社長の娘が幼馴染で同じ高校に通う泉琴莉(いずみことり、CV:内田真礼)。ふたりは互いに思い合っていて、琴莉のほうが割合積極的だが真が今一歩踏み出せない構造。

そして、ある日、真の父親も原因不明の突然死を遂げる。

そこへ真と瓜二つのジン(CV:中島ヨシキ)が、『亜人』のIBMのメカ版みたいなロボットを連れて琴莉を殺しに現れる。ジンによると彼はパラレルワールドにある「日本公国」からやって来た。そして、そこではコトコ(CV:千本木彩花)という「公女」が暴政を敷いて、政敵を次々と粛清し、人民を苦しめていると言う。

真とジンは相対する一体の存在であり、真が死ねばジンも死ぬし、ジンが死ねば真も死ぬ。ジンの父親はコトコに殺されたのであり、それによってこちらの世界では真の父親が突然死したのである。

ジンは向こうでコトコを倒そうとしたが警備が厳重で近寄れないため、こちらの世界に来て、コトコの相対する存在である琴莉を殺すと言う。

これは却々面白い設定である。こちらの世界では恋人同士(の一歩手前)、あちらの世界では敵同士、琴莉を殺さないとコトコは死なないが、真としてはそれは困る。しかし、向こうの世界でコトコかジンのどちらかが死ねばこちらでもやっぱりどちらかが死んでしまう。

しかし、この設定でずっと引っ張るのかと思うと、ある展開を経て、あっさりとこの捻じ曲がった構造は解消されてしまう。面白い設定なのにもったいない気もするし、あっさりと解消しすぎて現実感も少し希薄になる。

もしも予算がたっぷりあるのであれば、収支的には冒険になるが、この設定で前編を作り、展開を変えて後編に突入という手もあったかなあ、と思う。

パラレルワールドの存在をナレーションで説明してしまう辺りも、まあ、上映時間を考えての苦肉の作なのだろうが、やや残念である。後半、真の苦悩を描くのにもあまり時間を割いておらず、その分彼の成長にやや唐突感が残るのも事実。

全般に少し展開を急ぎすぎている印象があり、最後の部分などはややご都合主義感もある。結局のところ、そんなものと比べてはいけないのかもしれないが、『君の名は。』ほどの圧倒的な完成度は感じられなかった。

でも、よく練られた設定で、画も魅力に富み、却々気を逸らせないのも確かである。普通なら死なないキャラクターがあっさり死んでしまったりする辺りも意表を突いている。

戦闘シーンも非常に立体的で迫力があるし、何よりも少女たちのスムーズな動きが、ややぎこちない一方でなんだか艶かしくてそそられる(笑)。そこが一番のウリなのかもしれない。

今後が楽しみなチームである。

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