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Wednesday, January 30, 2019

映画『チワワちゃん』

【1月30日 記】 映画『チワワちゃん』を観てきた。

門脇麦という女優が好きではないのであまり観る気はなかったのだが、あっちでもこっちでも褒めている人を見かけて、観るしかない気分になった。

で、実際観てみて仰天した。あまりの素晴らしさにぐうの音も出ない。映画の初めのほうで門脇麦が「青春の自爆テロ」と言うシーンがある。ある意味言い得て妙ではあるが、僕としては「焦燥感の横溢」みたいな感じ。そう、爆発できずに横溢する感じ。

さながらミュージック・ビデオなのである。音楽に合わせて1秒ぐらいのカットが次々に現れる。音楽が鳴っていなくて台詞で物語を運んでいるところでも、ひとつひとつのカットは割合短い。

でも、「カット割りが細かい」という感じじゃない。そう、あれは「切り貼り」の感じ。コラージュ。ひとつひとつはバラバラのものを貼り付けてあるのに、一歩引いて見たら意味のある画像になっている。そう、この映画ってそんな感じ。

映画を見終わってから、「そうか、岡崎京子だったのか!」と思った(ちゃんと事前に読んで知っていたはずなのだが、例によって忘れてた)。岡崎京子の原作を読んだ二宮健監督が、なんとか20代のうちにこれを映画化したいと恋い焦がれて、90年台の話を SNS華やかなる現代に移し替えて自分で脚本を作った。

ちなみに、90年台の話を現代に置き換えても見事に成立したのは、本質的なことは何も変わっていないと監督が言っているようなものだという宇野維正の見立ては素晴らしい。

キャストが良い。オーディションで選んだチワワちゃん役の吉田志織と一番チワワと親しかったユミ役の玉城ティナという超絶的にキュートな2人を中央に、キキを演じた長身の仲万美とサヤカ役のちっちゃくて可愛い古川琴音というファニーフェイス系の2人を脇に置く。

その2組の中間的な存在の松本妃代と松本穂香をさらに外側に置いて、唯一その同心円を突っ切る直線として門脇麦のミキを配している。

男はチワワの彼氏のイケメン・ヨシダに成田凌。ひとことも台詞を言わせなかったところが見事に功を奏している。そして、彼は最後に登場したシーンで初めてたくさんの台詞を吐くのだが、そのときにはもうチワワやミキが夢中になった存在ではないという構造になっている。見事。

にもかかわらず、監督が門脇麦に「これはミキがヨシダに会いに行く物語」と説明したというのを読んで、この監督の深さを改めて知る。

そして、寛一郎と村上虹郎という2人の2世俳優。みんなを暖かく見守り、みんなを繋ぎ止めるカツオ(寛一郎)に対して、いまいちみんなの輪に入れないでカメラのファインダーを覗きながら外側をぐるぐる回っているだけのナガイ(村上)という微妙な対照。

ハラダとアキラを演じた篠原悠伸と上遠野太洸も出番は少ないが個性はしっかり出ていた。

そして、有名カメラマン役で出てきた浅野忠信のただならぬ存在感!

これだけの大人数が出てきて、これほどしっかりと個性豊かに描き分けられているところが何しろすごい。

そして、この映像美である。

この映画は映像でしか表せないものをしっかりと映像で表している。そこがエライ!

撮影は相馬大輔だ。そう、同じ岡崎京子の『ヘルター・スケルター』もこの人だった(これは原作も読んだし映画も見た。もうひとつ彼女の作品で映画化された『リバーズ・エッジ』も観た。これも素晴らしかった。どうやら僕は、漫画はそれほど読んでいないが、岡崎京子にかなりのシンパシーがあるみたいだ)。

そして、600万円をめぐるエピソードも映画オリジナルだと言うから大いに感心したのだが、同じく原作にはなかったという、あのラストシーンは秀逸!

構成力と言い、表現の豊かさと言い、ポップな疾走感と言い、すごい才能が出てきた。

あ、あらすじ何も書いてないね。まあ、岡崎京子ということである程度の想像はつくでしょ。ともかく見てよ。ほんとに痛い作品なのだけれど、読後感はすこぶる良い。

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