映画『いつか輝いていた彼女は』
【12月3日 記】 映画『いつか輝いていた彼女は』を観てきた。
新人の登竜門的な、音楽×映画の祭典である MOOSIC LAB にエントリーされた中の一作で、今夜見たのは『1人のダンス』『下鴨ボーイズドントクライ』と3本建てになった<Cプログラム>だったが、僕は最初からこの『いつか輝いていた彼女は』狙いだったので、今回はこの映画に絞って書く。
そもそもは僕と twitter 上で長年の相互フォロー関係にある(何がきっかけでそうなったかは憶えていないのだが)女優の日高七海さんが出演している映画、というのが僕の耳に入った最初の情報だった。
で、ネット上を見ていると、これがまた観たの人の評判が良いのだ。それで、これは何が何でも観なければと思って、ちょうど今夜渋谷のアップリンクで上映するのを見つけて予約したら、なんと日高さんから「是非観てほしい」とのお誘いが。
おかげで、舞台挨拶に立った日高さんとも初めてリアルで会えたし、監督の前田聖来(まえだせいら)さんにも紹介してもらえた。
当然低予算で作られ、映画作りに慣れていないぎこちなさも残ってはいるのだが、脚本と役者がとても良いので、結構良い映画になっている。
女子高生の群像劇(彼女たちの「その後」を含めて)なのだけれど、音楽に青春を捧げている子、演劇に一生懸命打ち込んでいる子、読モでも何でも良いからともかく芸能界に行きたい子などが描かれる一方で、それぞれに一生懸命に打ち込んでいる友だちを陰でちょっと悪く言うような、なんだか女のビミョ~な嫌らしさを、見事なほどにビビッドに掬い上げている。
こういう脚本は女の人でないと書けない。男には不可能だ。
そして、女の子の醜い面を描いているようでありながら、決して突き放していないところが良い。つまり、描き方が他人事ではないのである。いろんな少女たちを描きながら、映画の作り手は、それぞれが自分なのだという自覚を以て描いている気がする。
他の2本には悪いけれど、今夜見た中ではこの作品がはるかに飛び抜けていると感じた。
それは他の2本が、もちろん自分の身の周りを描こうとすること自体は問題がないのだが、しかし現実には自分の身の周りではなく、自分しか描けておらず、自分から迸るものを画面に焼き付けることしかできていない印象を与えたのに対して、この映画は離れたところから自分と自分の周りを観察する視点をしっかりと保持していた気がする。
主演は「ミスiD2018」(それが何なのか僕は知らないのだが)の小倉青。演技は初めてらしいが、この凛とした瑞々しさはちょっと他の女優には出せないと思う。
そして、彼女と一緒に音楽をやっていた女子高生役に MINT mate box というバンドのボーカルの mahocato が起用されていて、このバンドがこの映画の音楽も担当しているのだが、高校を出て売れ始めた彼らがボーカルの母校で取材をされているところから始まる構成も非常に巧いと思った。
そして、最後に我が友(笑)日高七海さんである。今まで正直言ってちょい役でしか観たことがなかったのだが、今日見て非常に安心した。正直に書くが、僕はこういうタイプの女の子は大の苦手で、自分からは決して近づかない。嫌いなのだ(笑)
それくらいリアルだったという、まあ、これは褒め言葉である。
で、彼女の紹介で監督にも会った。去年までは女優だったそうで、大変綺麗な人だ。あんなに綺麗だときっと「女優やめるなんてもったいない」と言う人がいるだろうが、僕は逆だ。
これだけの脚本が書ける人が、これだけの映画を撮れる人が、他人の書いた台詞を読み他人が監督する画面の中に埋もれてしまうのは大変もったいないと思う。非常に才能のある監督だと思う。今後が楽しみである。
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