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Saturday, December 01, 2018

映画『ギャングース』

【12月1日 記】 映画『ギャングース』を観てきた。

入江悠監督は『SR サイタマノラッパー』で名を挙げた人だ。シリーズ最初の作は僕も観たのだが、その後もサイタマノラッパーばかり撮っている印象があって、ああ、この人はひょっとしたら一生サイタマノラッパーを撮り続けるんだろうか、とまでは思わないにせよ、一生自主映画っぽい監督で終わりそうな感じがあった。

しかし、そんな風に思っていると、今度は『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』が出てきて、僕はこの映画で、あっ、この人、他の映画も撮れるし、結構すごい!と大いに見方を改めた記憶がある。

ところが、その後 WOWOW でドラマWを何本か引き受けたり、『ジョーカー・ゲーム』や『22年目の告白 ─私が犯人です─』を撮ったりするに至って、あらら、なんだかフツーの(つまり自主映画っぽくない)監督になっちゃったな、と思っていた。

別に自主映画が偉くて商業映画が堕落しているなどと言うつもりはまるでないが、今回の映画はサイタマノラッパーやかまってちゃんが帰ってきた感があって、僕は嬉しかった。

この2本は音楽をテーマとした映画だが、今回の『ギャングース』では渡辺大知、金子ノブアキ、MIYAVI という3人のミュージシャンが出演していて、やっぱりこの監督は音楽と通じたところのある人だと思った。

さて、この映画は少年院上がりでまともな職にも就けずに毎日の食べ物にも事欠いていた3人が、犯罪者の戦利品を横取りする“タタキ”(=強盗)を繰り返してのし上がっていく(とも言えないがw)話なのだが、この3人の取り合わせが素晴らしい。

リーダー格のサイケを演じた高杉真宙は、僕は若手の俳優の中ではかなり多才な存在であると思っている。とにかく印象が強烈だった『散歩する侵略者』の感情のない不気味な宇宙人から『虹色デイズ』での秀才のオタク、そして今回の負けん気の強い落ちこぼれまで、どんな役にでも幅広く対応できる役者だ。

チームの中で工具係のカズキを演じたのは加藤諒だ。何に出ていたと言われると余り記憶はないのだが、ともかく一度見たら忘れられない顔で、体つきも特異で本当に四頭身ぐらいに見えてしまう。そういう強烈な印象を与えるのは才能以外の何ものでもないと思う。

そして、運転係のタケオを演じたのは渡辺大知で、『色即ぜねれいしょん』のビクビクした主人公、『勝手にふるえてろ』で松岡茉優にキモい迫り方をする「ニ」、『ここは退屈迎えに来て』でゲーセンで腐ってる元クラスメイトなど、今ダメ男子を演じさせたら彼に勝る者はいないのではないだろうか?

ちなみに、この映画のエンディング・テーマも渡辺による作品で、渡辺が他の2人を伴って歌っている。

彼らは非情な道具屋・高田(林遣都)の助けを借りて(ったって有料、しかも高額である)巨大詐欺組織のオーナー・安達(MIYAVI)や番頭・加藤(金子ノブアキ)に挑む。途中から安達に恨みを持つ川合(勝矢)も加わる。

ただの犯罪映画でもアクション作品でもない。かと言って青春映画的な色合いは全くない。徹底的に社会の最底辺の3人の絶望と焦りとやけっぱちを描いている。今この時代に誰も扱いそうにない、なんとも言えないテーマではないか。

昔からそうだが、この監督はひとつひとつのカットが割合長い。この映画においては、例えば加藤が会社で檄を飛ばすところや、河川敷で3人が決意するところなどで、その手法が功を奏していると思う。どちらもとても良い画だ。

そして、エンディングの、ガラス越しのラーメン屋から引いて行くシーンが本当に秀逸な画作りだった。

筋運びも非常にうまく緩急が付いていて、非常に良い作品になっていると思う。

ところでギャングースとはギャングとガチョウかと思ったら、実はギャングとマングースの造語なのだそうだ(笑) 書き忘れたが、この映画もまた漫画原作によるものである。

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