天空の楽園
【10月12日 記】 会社を休んで夫婦で長野県の昼神温泉に行ってきた。長野県下伊那郡阿智村昼神──日本で一番きれいな星空が見えると言われている場所である。今回の第一目的ももちろん星空鑑賞である。
ホテルからのバスが街明かりを抜けて真っ暗な山道をしばらく走るとケーブルカーの駅に着く。そこから座席のないケーブルカーに8人ぐらいずつ放り込まれ、場所によってはほぼ真っ暗な中、さらに靄がかかっていたりもする中をガクンッと揺れながら12分間も立っているのは結構怖い。
着いたところは空の開けた空間。地上より10度ほど気温が下がった山頂の芝生にみんな寝っ転がって空を見る。
進行役のお姉さんに目をつぶれと言われて、あらゆる建物の照明が一斉に消されたあと、カウントダウンが始まって一斉に目をあける。
ところがこの日の空は厚い雲に覆われて何も見えないのであった。──ガーン!そんなことがあろうとは!という感じ。
いや、もちろん出かける数日前から天気の心配はしていた。ただ、妻は強烈な晴れ女である。僕はかなりの雨男だが、一緒に出かけるときは全然勝負にならない。雨の予報を覆して晴れにしてしまうような人なので、まあ大丈夫だろうと僕は楽観していた。
そうしたらやっぱり当日の予報は雨から曇り、曇りから晴れに。ね、やっぱり大丈夫と思っていたのだが、しかし、陽の光が地上に届くような天気であっても、空が雲に覆われているとやっぱり星は見えないのである。
雨が降っていなくても、雲に覆われて星が見えないことがある、というところまで僕の想像力は及んでいなかったのである。
そういう日はどうするかと言うと、司会のお姉さんがレーザービームで(雲に覆われているため)ほの白い夜空を指し、「本来ならこの辺りに○○星が見えます」などと言い、あとは壁面に映した星座の絵などで解説をするのである。
星が見えなくても同じ料金を取って開催するのかい?と思われる方も多いだろうが、これは却々難しいらしい。何故なら、最初は見えていなくても風が吹いて雲を動かし、一気に星が煌くような日もあるのだそうである。現に前夜がそんな日であったそうな。
なるほど、天津風、雲の通い路吹き閉じよ、っちゅうやつか、などと感心しながら聞いていたのだが、残念ながらこの日は天津風は吹かず、乙女の姿も星の輝きも何も見えない。
一瞬雲の裂け目ができて、別々の場所で2つだけ星が見えたのが唯一の収穫であった。
で、その「星は何か?」という質問に対して司会のお姉さんは、「あれはベガでしょうか」「あちらはひょっとすると火星でしょうか」などと一応答えながら、「実は周りの星が見えなければ私たちもどの星だとは言えません」と言う。
高度に発達した天文学は、「この年のこの日のこの時間のこの星」とインプットすれば、それに対するアウトプットとして絶対的な座標を返すことができるのだろうけれど、星座の解説員の場合は手許にコンピュータがあるわけでも電子望遠鏡があるわけでもない。
あくまで、あれが北極星で、だとすると今はこの季節だからあれがカシオペア座で、そうすると反対側にあるあれが…などという相対的な位置関係が彼らの知識を形作っているのである。確かに星座ってそういうもんだよなあとあらためて感心した。
で、今回の教訓:
- 厚い雲に覆われていると星は見えない
- 周りの星が見えなければ、それが何座の何星なのかは分からない。
まあ、これだけ解っただけでも良しとしよう(笑)
ちなみに雲のある日のほうが夜空は明るい感じがする。それは雲が地上の光を反射するからなのだそうだ。
それで Every cloud has a silver lining という諺を思い出したのだが、いや、それはちょっと違う、はい、確かに違うのだが、ま、今夜の曇天にも silver lining を見た思いがしたということで如何だろうか(笑)
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