映画『あのコの、トリコ。』
【10月14日 記】 映画『あのコの、トリコ。』を観てきた。原作は“あのトリ”と略される人気少女漫画だそうだ。
映画館はその原作のファンか、あるいは主演の吉沢亮のファンか、ともかく若い女の子でいっぱいで、男女比はカップルの片割れを含めても 1:30 ぐらい。
そんな中で僕の目当ては新木優子である。昨年の市井昌秀監督による主演作品『僕らのごはんは明日で待ってる』がとても良かったから。新木優子は non-no のモデルとしては夙に有名らしいが、僕はこの映画で知った。
しかし、残念ながらこの映画も、そして、この映画における女優としての新木優子も、実のところあまり注目も評価もされなかったようだ。なのに僕は、映画も新木優子もとても気に入ってしまった。僕にはよくこういうことがある。
さて、今日の映画の話に戻すと、男2人+女1人が幼馴染の三角関係という定番中の定番の設定である。3人とも役者志望だが、立花雫(新木優子)と東條昴(杉野遥亮)は子役として経験を積み、雫は雑誌のモデルとして、昴は新進の俳優として順調なその後を歩んでいる。
それに対して、鈴木頼(より)(吉沢亮)は、(はっきりとは描かれていないが)多分「みんなの前で大きな声でお話ができるように」という親の思いでやらされていただけで、オーディションにも落ちまくって、雫と一緒に映画に出ようと指切りしたことも忘れていた。
親の転勤で雫らとも離れ離れになっていた頼が、ある日コンビニで雫の写真が雑誌の表紙を飾っているのを見つけて、役者になる夢、というよりも雫への思いが甦って、雫と昴の通う高校に転入してくる。──それが映画の出だしである。
頼はメガネをかけたどうしようもないヘタレ男子として暫くのあいだ描かれる。そして、メガネをはずしたら、まるでギアチェンジしたみたいに俄然俳優としてのオーラが出てくるところがこの話のミソである。
頼を育てることになる映画監督の近藤(岸谷五朗)が一体頼の那辺にその才能を見出したのかが不明であるし、如何に雫への一途な思いが引き鉄になったとは言え、それだけで頼が役者として開花するのはやや強引であるなど、ストーリーとしては少し難があるが、浅野妙子の脚本はそれなりに手際が良い。
さて、いつも監督目当てで映画を観ることが多い僕だが、この宮脇亮という人は全く知らなかった。パンフレットには「数々のドラマを手掛けた期待の新鋭」という形容矛盾したキャッチコピーが書いてあるのだが、調べてみると、2008年に『赤い糸』の助監督を務めたきり、映画においての実績はない。
その間、主にカンテレや CX の連続ドラマの部分的な演出で食いつないできているようなのだが、この人は一体何者なのだろう?
驚いたのは、学校のベンチで雫と頼が話すシーンや、撮影所のセットで昴と頼が対峙するシーンなどで、驚くほどの長回しを使っていること。役者を信じて、しっかり役者にプレッシャーをかけて、じっくり演技させているところに好感を覚えた。ともにとても良いシーンだった。
吉沢亮は僕も何本かの映画を観ているが、この人は結構器用にいろんなタイプの役を演じ分けている。そして、新木優子のほうは、この溌剌とした明るさがやはりとても素敵である。
映画が終わった直後の右隣の女性2人連れの会話:
「吉沢亮より、もうひとりの男の人のほうがカッコよくなかった?」
「あー、あたし吉沢亮のことしか見てなかったから知らない」
「でも、新木優子めっちゃ可愛かった!」
「そう、新木優子めちゃくちゃ可愛い!」
なるほど、原作ファンと吉沢亮ファンだけではなかったようである。
ところで、雫と頼の事務所の社長役の古坂大魔王がとても良い味を出していた。事務所に PPAP のポスターが貼ってあるのも笑えた。
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