『ニセコイ』マスコミ試写会
【10月23日 記】 映画『ニセコイ』のマスコミ試写会に行ってきた。河合勇人監督。これまた漫画が原作なのだそうだ。
もしもヤクザの組長の一人息子とギャングのボスの一人娘が、双方の抗争を抑えるためにお互い恋人の振りをしなければならないような破目になったら、というジャスト・ワン・アイデアで書かれた、ドリフターズのコントみたいな設定である。
ほんとにバカバカしい設定で、言うなれば最初から茶番なのであるが、そう思ってしまうと終わりである。最初から決めつけずに観られるかどうかが、映画を楽しめるかどうかに直結する。
日本の伝統的なヤクザ・集英組とニューヨークからやってきたギャング組織・ビーハイブは、それぞれのトップ同士は旧知の仲なのだが、若い者同士の諍いから全面戦争の様相を呈してきた。
それを案じた組長(宅麻伸)とボス(団時朗)は、お互いの息子と娘である楽(中島健人)と千棘(ちとげ、中条あやみ)につきあっている振りをさせて、血気にはやる部下たちを抑えようとした。
ところが、楽はひ弱な感じだし、ヤクザが嫌いだし、おまけに6歳の時に結婚を誓った女の子がいて、その子をずっと探している。一方、千棘は金髪碧眼のハーフで見た目は可愛いがガサツで暴力的。こんな2人が合うはずがない。──という設定である。
それに加えて両陣営のヤクザとギャングが入り乱れて、おせっかいだったり、法もへったくれもない暴力だったりを繰り広げるドタバタである。
喜劇というものはまことに難しいもので、やっぱり「うん、あまり笑えないな」というところもある。でも、声に出して吹き出してしまったところもある。
そして、ジャスト・ワン・アイデアの設定で押し通すのかと思ったら、楽が仄かな思いを抱いていているクラスメート・小咲(池間夏海)と、楽を探し求めて突然転校してきた万里花(島崎遥香)という新しい駒をつぎこんで、四角関係と言うか、三角+1線分と言うか、話がややこしくなってきて面白くなる。
最初は反発しあっていた2人が少しずつ相手の良さに気づいて、というのは予想通りと言うか定番と言うか、という感じなのだが、とかく若者の恋心というのは揺れ動くものなので、そうすんなりとは事は運ばない。この辺の揺さぶり方は巧い。
で、どうやってこの恋バナをまとめるのか、主人公の2人の気持ちをそれぞれどちらに倒して映画を締めるのか、終盤ずっとそのことばかりを考えて観ていた。
冒頭のシーンで6歳の女の子が読んでいたのが『ロミオとジュリエット』の飛び出す絵本とは如何にも無理があるだろうと思ったのだが、これは集英組とビーハイブをキャピュレット家とモンタギュー家になぞらえたものであって、これが後の展開に生きてくる。
しかも、そのままロミオとジュリエットをなぞるのではなく、喜劇的要素を織り込んでうまくアレンジしてある。
でも、クライマックスの2人をそれぞれの真正面からのワンショットの切り替えで繋いだり、挙句の果てにカメラが2人の周りをぐるぐる回ったり(おまけに背景はきれいな電飾だ)、そういう撮り方ってどうよ、と呆れたのだが、いや、ま、こういうのがアイドル映画の撮り方なのかもしれない(笑)
中条あやみにとっては間違いなく新基軸になったし、映画としても後口は悪くない。楽しい作品だった。高校生諸君、恋を楽しみ給え。
最後に、池間夏海がめちゃくちゃ可愛かったことだけは忘れずに添えておこう。12/21(金)公開。
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