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Monday, October 22, 2018

映画『ここは退屈迎えに来て』

【10月21日 記】 映画『ここは退屈迎えに来て』を観てきた。

読んだことはないけれど、原作者の山内マリコは『アズミ・ハルコは行方不明』を書いた人で、それを廣木隆一が映画化するとなると面白くないはずはないと大いに期待して行った。その期待は全く裏切られることがなかった。

冒頭から終わりまで、もう廣木隆一監督らしい長回しの連続に次ぐ連続である。

運転しながら喋ったり歌ったりするシーンはほとんどがワンカット。ゲームセンターでの(廣木監督がよくやる被写体を入れ替えながらの)長回しや、橋の上から始まる門脇麦の長い長いワンシーン・ワンカットなどが特に印象深かった。

そして、これまた廣木監督特有の、ものすごく力強い引きの画(橋の上の門脇麦もそのうちのひとつだし、自動車教習所の2人を最初に捉えた画もそう)。

そして、『伊藤くん A to E』のときに、この監督はこんなにアップを多用する監督だったっけ?と思ったのだが、この映画でも橋本愛や岸井ゆきのらのものすごく良い表情をアップで捉えている。

設定としてはかなり込み入った映画である。群像劇という言い方もできるのだろうが、最初はその大勢の登場人物がいくつかのグループに分かれて出てきて、しかも時代が高校時代からその10年後まで、かなり前後するので観客は全体像を掴みにくい。

最初は、東京から戻ってきてフリーライターをしている「私」(橋本愛)が高校時代の親友・サツキ(柳ゆり菜)と、高校時代に憧れの存在だった椎名(成田凌)に会いに行くところから始まる。始まり方としては『桐島、部活やめるってよ』に少し似ている。

そして、待合せの前に「私」と仕事をしていたカメラマンの須賀(村上淳)も何故か2人についてくる。車がないとどこにも行けない富山を舞台にしながら、あえて車で移動するロードムービー風にしたのは映画独自の設定だそうだ。これが非常にうまく行っている。

その途中、昔椎名たちと行ったゲームセンターを見つけ、懐かしさのあまり立ち寄ったら、そこに元クラスメイトの新保(渡辺大知)がいた。頭は良いが、ややいじめられやすいタイプで、椎名に対して強い憧れの気持ちを抱いている。

一方、その椎名と高校時代に少しつきあっていたのが「あたし」(門脇麦)。その「あたし」が椎名に振られてから、ストーカーみたいにつきまとってくるのが遠藤(亀田侑樹)。

椎名やサツキと同じクラスにいて47歳の皆川(マキタスポーツ)と援交をしているのが「なっちゃん」(片山友希)。

そして、高校は違ったが同じ地元出身で一時はモデルとして売れていたが、今は地元に戻ってブラブラしているのがあかね(内田理央)。そのあかねの同窓生で、今でもしょっちゅうファミレスで会ってガールズトークに興じているのが南(岸井ゆきの)。

ともかく女の子たちを中心とした話である。原作が良いのか脚色が良いのか分からないが、良い台詞、すごい台詞、キツイ台詞がたくさんある。脚本は櫻井智也という人。

ほとんど何も起こらない、日常を描いた群像劇というのは、どうしても観ていて飽きてしまうものなのだが、この映画は不思議にトーンが明るく、全く気を逸らされることがない。

橋本愛という女優は独特の感性を持っていて、僕はとても好きなのだが、この映画でも多分彼女でなければ出せないものを出している。柳ゆり菜、岸井ゆきの、片山友希ら若手女優陣がみんな素敵な上に、村上淳、成田凌、渡辺大知の男優陣も素晴らしい。

渡辺大知は『色即ぜねれいしょん』や『勝手にふるえてろ』やこの映画みたいな屈折した役柄が本当に巧い。

登場人物一人ひとりが別々にフジファブリックの『茜色の夕日』を歌うというアイデアも秀逸だった。廣木隆一ファンには自信を持ってお勧めできる作品である。

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