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Tuesday, October 09, 2018

劇場版『NIGHT HEAD』

【10月9日 記】 WOWOW でやっているのを見つけて録画しておいた劇場版『NIGHT HEAD』を観た。1994年だから、ほぼ四半世紀前の映画だ。

その前にフジテレビの深夜でやっていたテレビのシリーズも途中からずっと観ていた。

妻が「この映画を25歳で観た人も今では50歳なのよ」と驚くので(正確に言うと、49歳だけどな)、僕も「50歳で観た人は75歳だ」と応ずると、「50歳の人は観ていなかったと思う」と返された。うん、確かにそうだろうな。

でも、若い時に熱狂した人であれば、今見ても全く色褪せることなく、めちゃくちゃ面白い──そのことに逆に驚いたぐらいである。

カルト的な人気を誇り、語り尽くされた感のある作品なので、僕がここでくどくど解説する気はないが、直人(豊川悦司)と直也(武田真治)という、ともに超能力を持つ兄弟の話である。

自分でも制御できないその能力のために周囲から怖がられ、疎まれ、山奥の研究所に閉じ込めれられていた2人が逃げ出すところからテレビ版のドラマは始まる。

このドラマが当時画期的だったのは、それまでは超能力者と言えば端的にカッコいいヒーローとして描かれるのが一般的だったのに、ここでは超能力を持つ者の苦しみや悲しみを描いたところである。

兄の直人がサイコキネシスによって物を動かしたり壊したりする能力の持ち主であるのに対して、弟の直也はリーディングの能力によって、周囲の人間の心を読み取る。

と言うよりも、直也の場合は悪感情が一気になだれ込んできてしまう体質で、彼が危機を察知した後はずっと頭痛に襲われてヨタヨタしているという、むしろ圧倒的に無力な存在として描かれている点が肝である。

兄はその弟を護るためなら何でもするが、気がはやるばかりで、自分の激しい感情をうまくコントロールできず、むやみな破壊をしてみたり、いざというときに躊躇したりする。

そんな風に、スーパーヒーローであるはずの存在がただの弱い人間でしかないという逆説的な設定が面白いのである。

劇場版でも、このテレビ版の設定と登場人物を踏襲して全く飽きさせない。

そして、今回観てみて、今では名を成した役者たちが結構出ていたことに気づいて驚いた。最初に出てきて殺される学校の先生は松尾スズキだ。その高校の生徒で、超能力を持ち、助けを求めて直也にコンタクトしてきた少女は小島聖だ。確かこのころ豊川悦司と同棲していたはずだ。

そして、その妹が奥菜恵だ。直人と直也に敵対する組織の超能力者・三雲はテレビ版に引き続いて篠井英介が演じている。僕はこの篠井英介と六平直政(彼は劇場版には出ていないが)の名前を憶えたのはこのドラマ・シリーズだった(2人ともめちゃくちゃ凶々しくて怖かった)。

さらに、エンドロールにも名前が見つけられなかったが、精神病院の職員を演じていたのは若い頃の徳井優である。

今ではこれだけさらさらと名前が言えるが、あの当時顔と名前が一致するのは主役の2人くらいのものだった。当時から非常に良いところに目をつけたキャスティングだったのだと改めて感心した。

そして、ほぼ全編にわたって脚本と演出を務めた飯田譲治は最近名前を聞かないのだが、何をしているのだろうか? この人の名前も、このテレビ番組で一瞬にして憶えてしまった。類まれなる才能の持ち主だと思う。もっと彼の作品を観てみたいと思う。

思えばこの作品がなかったら、『SPEC』のあの壮大なシリーズも生まれなかったのではないだろうか。

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