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Monday, October 22, 2018

『シングル&シンプル マーケティング』本間充(書評)

【10月22日 記】 こういう書き方をすると大変失礼だが、最新のマーケティング本だと思って読んだら、最後まで読んで「なぁんだ、当たり前のことしか書いてないじゃん」という感じの本なのである。

そして、それこそがまさにこの本の言わんとするべきことなのだと思った。何故こんな当たり前のことがちゃんとやれないかと言えば、それは著者が言うように、

「過去の成功体験が大きいマーケターには、理解しにくい時代」になった(p.31)

からなのである。

この本には難しい概念図やお題目めいた箇条書き、偉そうに公式めいたまとめなどがほとんど出てこない(唯一、「シングル&シンプル マーケティングの1D2P1V」というのがあるが)。ここにはただ、

現在のマーケティングでは、お客様、ターゲットの理解が、非常に重要なプロセス、活動になっていることがわかるでしょう。(p.67)

というような、解りやすい表現が、しかし、じゃあ具体的にはどうすれば良いの?と訊きたくなるような文章が並んでいるだけなのである。

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映画『ここは退屈迎えに来て』

【10月21日 記】 映画『ここは退屈迎えに来て』を観てきた。

読んだことはないけれど、原作者の山内マリコは『アズミ・ハルコは行方不明』を書いた人で、それを廣木隆一が映画化するとなると面白くないはずはないと大いに期待して行った。その期待は全く裏切られることがなかった。

冒頭から終わりまで、もう廣木隆一監督らしい長回しの連続に次ぐ連続である。

運転しながら喋ったり歌ったりするシーンはほとんどがワンカット。ゲームセンターでの(廣木監督がよくやる被写体を入れ替えながらの)長回しや、橋の上から始まる門脇麦の長い長いワンシーン・ワンカットなどが特に印象深かった。

そして、これまた廣木監督特有の、ものすごく力強い引きの画(橋の上の門脇麦もそのうちのひとつだし、自動車教習所の2人を最初に捉えた画もそう)。

そして、『伊藤くん A to E』のときに、この監督はこんなにアップを多用する監督だったっけ?と思ったのだが、この映画でも橋本愛や岸井ゆきのらのものすごく良い表情をアップで捉えている。

設定としてはかなり込み入った映画である。群像劇という言い方もできるのだろうが、最初はその大勢の登場人物がいくつかのグループに分かれて出てきて、しかも時代が高校時代からその10年後まで、かなり前後するので観客は全体像を掴みにくい。

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Sunday, October 21, 2018

映画『ハナレイ・ベイ』

【10月21日 記】 映画『ハナレイ・ベイ』を観てきた。村上春樹の短編集『東京奇譚集』に収められた原作を松永大司監督が映画化したもの。

何度も書いているように、僕は一度読んだ本でも観た映画でもすぐに忘れてしまう。

小説を読み終わって、ああ、面白かったと思って本棚に置きに行ったらそこに読み終えた同じ本があったとか、一度観た映画なのにほとんど終わりかけるまで真犯人が誰だったのか思い出さなかったとか...。

でも、部分的に何かを憶えていることはある。

この小説も、カウアイ島のハナレイ・ベイが舞台の、中年女性と若いサーファーの話で、確か短編集を通して幽霊がテーマだったかな、という程度の記憶しかないのだが、ただひとつだけ強烈に心に残っている箇所がある。

それは、中年女性がエルビスの話をしたら、若者はプレスリーではなくエルビス・コステロの話だと取り違えるところである。

僕にはなんだかそういうコミュニケーションの小さな齟齬が(良い意味でも悪い意味でも)象徴的な事象に思えたのだ。

今回はこのシーンだけが見たくて観に行ったようなものなのだが、見始めてすぐにこの映画にこのエピソードはないだろうと思った。

それは時代設定が2007年からの凡そ10年間に変えられていたからだ(この時代であれば、中年女性でさえプレスリーを知らない可能性がある)。

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Thursday, October 18, 2018

映画『止められるか、俺たちを』

【10月18日 記】 映画『止められるか、俺たちを』を観てきた。

僕は若松孝二の映画を観たことがない。映画観で観たことがないだけではなく、多分テレビやビデオでも1本も観たことがない。時代がずれていたのだ。

若松孝二が映画を撮り始めて少し名前が売れてきたころは、まだ僕らは親に連れられてという形でしか映画館には行けなかった。友だち同士で映画館に行けるようになっても、まだ若松孝二に興味を持つには早すぎたし、だいいち成人指定だと入れなかった。

そうこうするうちに、若松孝二は連合赤軍に肩入れする危険人物だというイメージが僕の中に染み付いた。あの時代、僕らは親からも先生からもテレビからもそういう教育を受けていたから仕方がない。

もう少し長じて、ひとりでアングラな邦画を観るようになって、若松孝二には実は結構大勢のファンがいることを知ったが、他の数多くの監督の作品を見るのに忙しくて若松孝二にまで手が回らなかったし、それよりもすでに最初に僕に染み付いたイメージを払拭することはできなかった。

そんなわけで僕は若松孝二を未見のままこの映画を観た。だから、この文章は若松孝二の作品には全く触れることもなく、若松孝二自身にもほとんど触れることもなく書くことになる。この映画の評としては邪道である。

でも、若松孝二を全く知らない者が観てどうだったかと言うと非常に面白かった。若松孝二を全く知らない者がどう評価したかと言うと、とても良い作品だと思った。

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Tuesday, October 16, 2018

『人魚の眠る家』試写会

【10月16日 記】 抽選に当たって映画『人魚の眠る家』の試写会に行ってきた。

僕は文章の書き手としては東野圭吾を評価していない。何冊が読んでみたけれど、結局もう読むことはなくなった。ただ、この作家の小説はドラマ化/映画化すると意外に良い作品になることが多い。

多分、物語の初期設定と基本的なストーリーの組立て方は良くできていて、逆に人物の描写は薄いので脚本家が自由に肉付けして行きやすいのではないかと思う。

で、結論から先に書くと、この映画は非常に良かった。

脚本を手がけたのは篠崎絵里子。映画の脚本は久しぶりだと思うのだが、これは彼女のベストになったのではないだろうか。言葉の選び方が見事に適切なのである。

周りが見えなくなってしまった時に言いそうな乱暴な台詞。カッとしてつい口走ってしまいそうな不適切な表現。理屈も何もあったもんじゃない身勝手な言い分。逆に精一杯自分を抑えて相手の気持ちを鎮めるのに適切な言葉…。

この映画は一応医療ドラマ風の体で始まる。だが、原作が東野圭吾で監督が堤幸彦となると、単に医療現場の葛藤や病気の子供を持つ親の心持ちを描くだけで終わるはずがない。そう思いながら観ていると、元から怖い設定が、どうなるかどうなるかという感じで、どんどん怖くなる。

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Sunday, October 14, 2018

映画『あのコの、トリコ。』

【10月14日 記】 映画『あのコの、トリコ。』を観てきた。原作は“あのトリ”と略される人気少女漫画だそうだ。

映画館はその原作のファンか、あるいは主演の吉沢亮のファンか、ともかく若い女の子でいっぱいで、男女比はカップルの片割れを含めても1:30 ぐらい。

そんな中で僕の目当ては新木優子である。昨年の市井昌秀監督による主演作品『僕らのごはんは明日で待ってる』がとても良かったから。新木優子は non-no のモデルとしては夙に有名らしいが、僕はこの映画で知った。

しかし、残念ながらこの映画も、そして、この映画における女優としての新木優子も、実のところあまり注目も評価もされなかったようだ。なのに僕は、映画も新木優子もとても気に入ってしまった。僕にはよくこういうことがある。

さて、今日の映画の話に戻すと、男2人+女1人が幼馴染の三角関係という定番中の定番の設定である。3人とも役者志望だが、立花雫(新木優子)と東條昴(杉野遥亮)は子役として経験を積み、雫は雑誌のモデルとして、昴は新進の俳優として順調なその後を歩んでいる。

それに対して、鈴木頼(より)(吉沢亮)は、(はっきりとは描かれていないが)多分「みんなの前で大きな声でお話ができるように」という親の思いでやらされていただけで、オーディションにも落ちまくって、雫と一緒に映画に出ようと指切りしたことも忘れていた。

親の転勤で雫らとも離れ離れになっていた頼が、ある日コンビニで雫の写真が雑誌の表紙を飾っているのを見つけて、役者になる夢、というよりも雫への思いが甦って、雫と昴の通う高校に転入してくる。──それが映画の出だしである。

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Friday, October 12, 2018

天空の楽園

Starrynighttour

【10月12日 記】 会社を休んで夫婦で長野県の昼神温泉に行ってきた。長野県下伊那郡阿智村昼神──日本で一番きれいな星空が見えると言われている場所である。今回の第一目的ももちろん星空鑑賞である。

ホテルからのバスが街明かりを抜けて真っ暗な山道をしばらく走るとケーブルカーの駅に着く。そこから座席のないケーブルカーに8人ぐらいずつ放り込まれ、場所によってはほぼ真っ暗な中、さらに靄がかかっていたりもする中をガクンッと揺れながら12分間も立っているのは結構怖い。

着いたところは空の開けた空間。地上より10度ほど気温が下がった山頂の芝生にみんな寝っ転がって空を見る。

進行役のお姉さんに目をつぶれと言われて、あらゆる建物の照明が一斉に消されたあと、カウントダウンが始まって一斉に目をあける。

ところがこの日の空は厚い雲に覆われて何も見えないのであった。──ガーン!そんなことがあろうとは!という感じ。

いや、もちろん出かける数日前から天気の心配はしていた。ただ、妻は強烈な晴れ女である。僕はかなりの雨男だが、一緒に出かけるときは全然勝負にならない。雨の予報を覆して晴れにしてしまうような人なので、まあ大丈夫だろうと僕は楽観していた。

そうしたらやっぱり当日の予報は雨から曇り、曇りから晴れに。ね、やっぱり大丈夫と思っていたのだが、しかし、陽の光が地上に届くような天気であっても、空が雲に覆われているとやっぱり星は見えないのである。

雨が降っていなくても、雲に覆われて星が見えないことがある、というところまで僕の想像力は及んでいなかったのである。

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Tuesday, October 09, 2018

劇場版『NIGHT HEAD』

【10月9日 記】 WOWOW でやっているのを見つけて録画しておいた劇場版『NIGHT HEAD』を観た。1994年だから、ほぼ四半世紀前の映画だ。

その前にフジテレビの深夜でやっていたテレビのシリーズも途中からずっと観ていた。

妻が「この映画を25歳で観た人も今では50歳なのよ」と驚くので(正確に言うと、49歳だけどな)、僕も「50歳で観た人は75歳だ」と応ずると、「50歳の人は観ていなかったと思う」と返された。うん、確かにそうだろうな。

でも、若い時に熱狂した人であれば、今見ても全く色褪せることなく、めちゃくちゃ面白い──そのことに逆に驚いたぐらいである。

カルト的な人気を誇り、語り尽くされた感のある作品なので、僕がここでくどくど解説する気はないが、直人(豊川悦司)と直也(武田真治)という、ともに超能力を持つ兄弟の話である。

自分でも制御できないその能力のために周囲から怖がられ、疎まれ、山奥の研究所に閉じ込めれられていた2人が逃げ出すところからテレビ版のドラマは始まる。

このドラマが当時画期的だったのは、それまでは超能力者と言えば端的にカッコいいヒーローとして描かれるのが一般的だったのに、ここでは超能力を持つ者の苦しみや悲しみを描いたところである。

兄の直人がサイコキネシスによって物を動かしたり壊したりする能力の持ち主であるのに対して、弟の直也はリーディングの能力によって、周囲の人間の心を読み取る。

と言うよりも、直也の場合は悪感情が一気になだれ込んできてしまう体質で、彼が危機を察知した後はずっと頭痛に襲われてヨタヨタしているという、むしろ圧倒的に無力な存在として描かれている点が肝である。

兄はその弟を護るためなら何でもするが、気がはやるばかりで、自分の激しい感情をうまくコントロールできず、むやみな破壊をしてみたり、いざというときに躊躇したりする。

そんな風に、スーパーヒーローであるはずの存在がただの弱い人間でしかないという逆説的な設定が面白いのである。

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Sunday, October 07, 2018

映画『日々是好日』

【10月7日 記】 映画『日々是好日』を観てきた。

先日亡くなった樹木希林の遺作を先行ロードショーで観ようとやってきた人が多かったのだろうが、僕の目当ては大森立嗣監督である。

いきなり良いアバンタイトルだなあと思った。

時代は1990年代前半。典子(黒木華)と美智子(多部未華子)はともに二十歳のいとこ同士。典子は真面目で努力型で理屈っぽくておっちょこちょい。美智子は素直でちゃっかりしてて現実的で思い切りが良い。

その2人がひょんなことから近所に住む武田先生(樹木希林)のもとでお茶を習い始める。

そういう設定とストーリーの端緒を手際よく説明しておいて、2人が初めて武田家を訪れた時に、蟻壁に掛けてあった扁額が映る。そこに書かれてあった文言が「日々是好日」──そしてそれがアップになってそのまま映画のタイトルになる。

僕は「ひびこれこうじつ」かと思ったら「にちにちこれこうじつ」と読ませている。さらに調べてみると、これは黄檗宗の高僧の言葉なのだそうだが、そこでは「にちにちこれこうにち」と読ませていたりする。

漢文が苦手な人は意味が取りにくいかも知れないが、中国語の「是」は英語の be動詞だと思えば良い。つまり、 Everyday is a good day の意である。

そのあと for 何と続くのかは観た人それぞれの感性で解釈して構わないと思うが、ざっくり言ってしまうと、 Everyday is a good day for you to live through みたいな感じかな。

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Saturday, October 06, 2018

Siri のショートカット

【10月6日 記】 iPhone XS の発売と iOS 12.0 のリリースに伴っていろいろな新しい機能が出てきて、それが新しい記事になっている。

そういうのを1つ読んでいると、Siri のショートカット機能というのが出てきた。そんなものがあるとは知らなかった。

僕のは iPhone X だが、そう言えばこの機種に切り替えてから Siri を全然使っていない気がしてきた。試しに Hi, Siri と呼びかけてみたが応答がない。Hey, Siri とも呼びかけてみたがナシのつぶてである。

どうやらその設定さえしていなかったらしい。

そこで改めてまずは僕の声を認識してもらうように設定して、それからショートカット機能を使ってみることにした。

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Wednesday, October 03, 2018

飛行機と Wi-Fi

【10月3日 記】 一つ前の記事で、早めに運休・欠航を決めてくれるとありがたいと書いたのですが、早めに決められない状況でちょっとした災難に遭ってしまいました。

昨日出張で大阪に行ったのですが、JAL111便が伊丹空港に近づいてベルト着用のサインが点いた後、やおら「機長のところに入りました報告によりますと伊丹空港の滑走路が閉鎖しているようです」との CA さんのアナウンス。

どうやら、搭乗スタッフにも細かい情報が入っていないようで、どういう状況で滑走路が閉鎖されているのか全く分かりませんし、それ故いつごろ復旧しそうなのかの説明もありません。

そうこうしているうちに、「この飛行機は関西空港に着陸します」との淡々としたアナウンス。

ま、幸いにして今は機上で無料で Wi-Fi が使える(というか、この日もすでに使用中だった)ので、昼前のアポイント先にこういう事情なので行けそうもないとメールを入れました。

そして、珍しい状況に見舞われたので、facebook と twitter に投稿したら、いろんな人がいろんなことを教えてくれます。

曰く、「滑走路にパンクしたタイヤの破片が散乱したらしいですね」「JAL111 だけが緊急避難になったみたいですよ」「全日空機らしいから、こりゃ完全に営業妨害ですね」等々。

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Monday, October 01, 2018

鉄道と将棋

【10月1日 記】 台風21号が上陸したとき、関西の鉄道は早々と運休を決めた。昨日の台風24号の際も、関西・関東ともに多くの鉄道会社が早くに運転打ち切りを発表した。

とても良いことだと思う。止めてくれるとあきらめがつくのである。

もちろん、雨が降ろうと槍が降ろうとどこかに急いで行かなければならない人もいるだろうが、どのみち荒天の中どこまで行けるかは知れたものではない。

でも、「とにかく行けるとこまで行こう」というのが人間の心理、と言うか、ひょっとすると日本人特有の気質なのかも知れないが、ともかく日本にはそういう発想をする人が(僕も含めて)少なくない。

そんなもんだから、台風来襲と重なった僕の人生最初の転勤は新大阪から東京まで6時間もかかってしまった。

次の転勤で大阪に戻った後、またもや台風に見舞われた僕の東京出張の帰路は、東京から新大阪まで12時間もかかってしまった。

鉄道だけではない。悪天候によるフライトキャンセルで飛行機が飛ばなかったことはたびたび。

いや、飛ばなかったのはまだマシで、朝から夕方まで伊丹空港で「もう飛ぶか、もう飛ぶか」とアナウンスを待ちながら順番にアポイントメントをキャンセルして結局夜の会食になんとか間に合ったということもあった。

いや、それよりもっとひどい、と言うか、怖かったのは、秋田空港で吹雪の中いざ滑走し始めたものの次第に機首が上がる素振りもまるでなく、いきなりものすごい急ブレーキをかけて飛行機が止まったときだった。

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