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Friday, August 31, 2018

映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』

【8月31日 記】 映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』を観てきた。

映画の副題と主題歌が小沢健二の往年の名曲で監督が大根仁──この映画を観るのにそれ以外の動機は何も必要なかった。

韓国映画の翻案であることも知らなかったし、当時のコギャルは渋谷系のオザケンなんか聴いてなかったということも、ああ、確かにそう言われればそうだ、という感じだった。

韓国映画の存在については、宣伝上あまり前面に出す気はないのか、パンフレットにも詳しく書いていない(監督/キャストへのインタビューの中で断片的に触れられているだけ)。40歳を過ぎた女性が高校時代の仲間を探すというストーリーと、そこに当時のヒット曲を絡ませるという設定を借りてきたようだ。

大根監督は70~80年代の韓国をコギャル文化満開の90年代の日本に置き換えた。冒頭からそのコギャルのエネルギーの横溢を見事に表現した怒涛のダンス・シーンである。

オザケンについては、ダンスのコンテストで他のグループが trf ばかりになっている中、あえて目立つためにこの曲を選んだという設定にしている。

『モテキ』の例を引くまでもなく、大根仁は非常に J-POP に造詣の深い監督である。この映画も選曲がほんとに素晴らしい。ここで選ばれた曲は、実は90年代という長いレンジから採られており、高校在学中の3年という期間をはみ出しているが、そんな嘘は全然気にならない。

もう1曲めの安室奈美恵で心を鷲掴みにされ、2曲めの久保田利伸で早くもうるうるしてしまう。

『SWEET 19 BLUES』は安室奈美恵の作品の中でも『a walk in the park』と並んで特に好きな曲だ。出だしのコード進行が解らなくて遂に楽譜を買ったのだが、楽譜を見てもなお、この進行を理論的にはどう解釈すべきなのか分からない。小室哲哉の真骨頂だと思う(なお、この映画では小室哲哉が「音楽全般」を担当している)。

PUFFY の『これが私の生きる道』が入ってくるのも見事なアクセントになっているし、Chara の『やさしい気持ち』が選ばれているのも心躍る。しかも、映画の中でのあの粋な鳴らし方!

そして、ここに『僕たちの失敗』を持ってくる感覚もすごい。これは元々は70年代の曲だが、コギャル世代にはテレビドラマ『高校教師』の主題歌とという認識だろう。

仲良し6人組の高校時代と40代が描かれる。奈美(広瀬すず/篠原涼子)、芹香(山本舞香/板谷由夏)、裕子(野田美桜/小池栄子)、心(田辺桃子/ともさかりえ)、梅(富田望生/渡辺直美)、奈々(池田エライザ/?)。

広瀬すずと篠原涼子では全然違うではないか、と思ったのだが、これがそうでもない。篠原涼子が広瀬すずに「寄せて」演じているからだ。裕子の2人も巧く似せている。40代になって一番最後に登場する40代の奈々を誰が演ずるのかというのが興味の焦点だったが、これは見てのお楽しみ。

残念ながら芹香の2人は少しイメージが違う。ただ、ここでの山本舞香は素晴らしく魅力的だし、板谷由夏も板谷由夏らしい役柄で、これはこれで充分だと思う。

梅を演じた富田望生は、どこかで見たことあると思ったら、『ソロモンの偽証』でトラックに轢かれて死ぬデブを、そして『チア☆ダン』で踊れなくて足を引っ張るデブを演じていた娘で、この娘、結構生き残っているなと驚く。

40代を演じた女優は演技の巧いところを揃えてあり、芝居としては見ごたえがあるし、そこに渡辺直美が圧倒的な個性とパフォーマンスで加わってめちゃくちゃ面白かった。

とりわけ時空を超えて踊るシーンはほんとに胸が熱くなった。

この映画は、圧倒的なダンス、と言うかモブのシーンを別として、通常演技部分の展開だけを見るとそれほど卓越したものではないのかもしれない。でも、そこに音楽が、そしてダンスが絡むとそれは特別なものになる。大根仁はそのことをとてもよく解っている。

オザケンの『強い気持ち・強い愛』(詞は小沢健二なのだが、なんと曲は筒美京平である)の冒頭はこうだ:

Stand up, ダンスをしたいのは誰?

そして、サビではこういう歌詞になる:

強い気持 強い愛 心をギュッとつなぐ
幾つの悲しみも残らず捧げあう
今のこの気持 ほんとだよね

ほんとである。

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