鳩よ!
【8月29日 記】 マンションのベランダに鳩の忌避剤を塗布している。2回に分けて、我が家の2つのバルコニーの、手すりと、バルコニーの床とフェンスの隙間にも塗ってもらった。
鳩が来て何が困るの?と言う人もいるかも知れないが、まずは糞害である。見た目の汚らしさ、不衛生、そして糞をされた場所の材質にもよるのだが、腐食したり変色したり、ということがある。
おまけに鳩は油断しているとバルコニーの隅に巣を作り、それに気づかずに放置していると卵を産み付ける。ウチのマンションでは2世帯がその憂き目にあったらしい。
なんとかマンション全体として対策を、と訴えたのだが、鳩がほとんど飛んでこない階に住んでいる人もいるわけで、全戸に同じ対策を施すのは難しいし無駄でもある。それで理事会の出した結論が、被害に遭っている居室(もちろん希望者だけだが)のベランダに鳩が嫌がる薬を塗ってみようということだった。
ここまでの作業の流れを作ってくれたのはマンションの管理人さんだ。彼が日夜鳩の動きを観察し、棟全体の被害をまとめ、そして僕に理事会に対して手紙を書いてくれと言ったのである。
その甲斐があって鳩の害は理事会と総会の議題となり、今回の忌避剤塗布へと繋がった。管理人さんにはとても感謝している。
忌避剤の購入代金はマンションの管理費からの支出。塗りに来たのはマンション管理会社の若い担当である。そして、忌避剤の主成分は唐辛子の辛さの正体であるカプサイシンだ。あと、ネトネトしているのも鳩が嫌がるらしい。
最初は忌避剤1本で希望する世帯全部を賄おうと考えていたようだが、最初に来た我が家で、圧倒的に狭いほうのサービス・バルコニーだけで1本を使い切ってしまい、仕切り直しとなった。
ところで、僕ら夫婦が今まで住んだマンションは全て川の近くにあったので、いろんな鳥がバルコニーにやってきた。そういう鳥たちが可愛くて、バルコニーに餌を置いたりもしていた。大事なことは、最初にやってくるスズメを追い払わないこと。スズメが安心して来るようになると、他の野鳥もやって来る。
だから、僕らはずっと鳥たちに対してフレンドリーに接してきた。
ところが、こと鳩となると、妻は猛烈に忌避する。スズメやカラスがバルコニーにやってきても、「チュンちゃん」だの「カー吉」だのと呼びかけたりしているのに、鳩に対しては激しく威嚇して追い返す。
「蛇蝎のごとく嫌う」という言葉があるが、まさに鳩がヘビやサソリであるがごとく嫌悪する。そこまでの激しさは僕にも今イチ理解できない。
まるで鳩に対して「お前ら一体何様のつもりでここに来てるんだ」と言わんばかりに鳩を撃退するのだが、もし鳩にそれなりの知能があったら「お前こそ何様のつもりなんだ」と言い返されても仕方がないと思う。
で、ともかく忌避剤を塗った。塗った翌日から、その上に留まった跡がつき始めた。1羽が何回も来たのか、何羽かが1回ずつ来たのか(後者であってほしい。あと何故だかセミが集まってきて、さながらセミの共同墓地状態になった)。
管理会社の担当さんも「これで学習してくれたらいいんですけどね」と言う(セミは学ぶ暇もなく死んでしまうのかもしれないが)。
とにもかくにも、管理人さんの導きでここまで来た。彼は鳩の生態にものすごく詳しい。さぞや今までいろんなマンションで見聞きしてきたのだろう。──そう思っていたら、先日ポツンとこんなことを言った。
「僕、昔、鳩を飼ってたんですよね」
鳩に罪はないと言えばない。鳩よ、管理人さんを恨まないでおくれ。
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