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Wednesday, August 15, 2018

映画『青夏 きみに恋した30日』

【8月15日 記】 映画『青夏 きみに恋した30日』を観てきた。古澤健監督作品。あまり期待しないで行ったのだが、意外に良かった。

公開後、半月が過ぎたところでの中押しの舞台挨拶、という珍しい企画があったこともあるが、場内はほぼ満員である。

最後に司会が、「この映画を今日はじめて観た方…、2回目の方…」などと順に質問して行くと、2回目3回めが少なからずいたのにも驚いたが、なんと今日で4回目という客もいた。

こういう恋の物語に嵌ってしまうと、何度も観てしまう人が出るのも想像に難くない。あとはこれにどれだけ普遍性を持たせられるかである。

物語は、これまた少女漫画が原作で、高校1年生の理緒(葵わかな)が夏休みに祖母の住む田舎に行き、そこで近所の酒屋の息子で2学年上の吟蔵(佐野勇斗)に恋をする30日間の話である。

理緒のほうは完全な一目惚れ。奥手そうに見えながら、結構頑張って自分からアプローチする。吟蔵のほうは、東京に行ってデザインの勉強をしたいという思いを殺してでも酒屋を継がなければならないという思いがあって、素直に理緒を受け入れられない。

一方で、吟蔵には近所の大人たちから「未来のお嫁さん」と冷やかされる万里香(古畑星夏)という雑貨屋の娘の存在があり、理緒のほうにも、理緒の親友のあや(久間田琳加)にくっついて理緒を追っかけてきて猛烈にアタックする祐真(岐洲匠)がいる。

「キュンキュンする」というのが売りの作品のようで、確かにキュンキュンする台詞がたくさんある。いや、汚れちまった大人たちにはむしろげっそりする台詞かもしれないが(笑)、微妙にわざとらしいところまで勇気を持って踏み込んだ良い本だと僕は思った。脚本は持地佑季子。

だが、「女子会」と銘打たれた上映後の舞台挨拶(葵わかな、古畑星夏、久間田琳加、秋田汐梨、そして主題歌を担当した井上苑子)でも盛んに言われていたように、客観的に見ると、吟蔵は自分の気持ちをはっきり言わないで引きずり回すタイプで、こういう男の子を好きになってしまうと辛い恋をすることになりかねない。

でも、それが見えないくらい恋してしまったというのが、この手の話の根幹をなす部分なのだ。そしてそんな主人公を演じた葵わかなは、キャリアも豊富で、ミドルティーンの頃からすでに巧い女優だった。この役を演じるには申し分のないキャスティングである。

そして何よりも素晴らしかったのがカメラワークだ。

この映画のロケーションの美しさは多くの人が指摘するところだが、この映画全体が美しいのは何も舞台となっている「上湖村」の渓谷や海岸線や雲の波や、隣村の花火大会が美しいからだけではない。

1つのシーンに何度も何度もカットを切り替えながら、1つひとつのカットが非常に素晴らしい構図で、人と人との距離や、身体に漲る気持ちを上手に表現している。理緒と吟蔵が2ショットで喋るシーンでも、カメラはゆっくりゆっくり動いている。心の動きが伝わってくるカメラワークだ。

映画を見ている間、このカメラマンは誰なんだろうとずっと気になっていたのだが、小宮山充という、名前に記憶のない人だったので驚いた。

ただ、僕がいろんなことを憶えていないのはいつものことで、調べてみると今までに『ただ、君を愛してる』『クローバー』『坂道のアポロン』の3本を観ていた。そう言えば『坂道のアポロン』のカメラも良かった。

若い人にはいい恋をしていい大人になってほしいな、とそんなことを考えてしまった。後味の良い青春恋愛モノである。

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