辞書を引く
【7月4日 記】 ことばの意味を間違って憶えて使っていた、というようなことは多かれ少なかれ誰でもあるだろう。
そして、正しい意味を知ったときに、「そうだったのか。じゃあ、これからは正しい意味で使おう」と素直に思えるものと、「えー、その言葉そんな意味で使うのか」と納得が行かないものがある。
例えば「あざとい」は辞書を引くと「あくどい」という意味が出てくる。でも、この言葉は「こざかしい」という意味で使う人のほうが多いのではないか? あるいは「わざとらしい」という意味で使っている人もいる。
でも、「あざとい」の意味として、「あくどい」は大抵の辞書が載せているが、「こざかしい」はまれに載せていない辞書がある。そして、「わざとらしい」と説明している辞書は、少なくとも僕は見たことがない。
僕は初めて辞書を引いたときに、「んー、『あくどい』はなんか違う」と釈然としない気持ちになった。
僕自身の最近の例でいうと「男娼」という単語がある。
映画『娼年』を観たときの映画評で主人公の松坂桃李の副業を「男娼」と書いたのだが、これが違っていた。
僕は単純に男の娼婦だから男娼、と思っていたのだが、書いてからなんとなく気になって辞書を紐解いてみたら、「男娼」というのは女性に体を売る男性のことを言うのではなく、男性に体を売る男性のことを言うのだった。
それで公開から随分日にちが経ってからブログの記事を訂正することになった。
まあ、歴史的に見て恐らく女性に体を売る男性はそれほどおらず、女であれ男であれ、その体をカネで買うのはいずれにしても男だったということなのではないかな、と思う。
ただ、いずれにしても、ことばというものはみんなが間違った使い方をし始めれば、それが正しい言い方になる。
みんなが「あざとい」に「わざとらしい」語感を覚え、世の中に女性に体を売る男性が増えてきたら、今までの間違った用法が定着するかもしれない。
ことばというのは本当に面白い。だから時々辞書を引いてみるのである。
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