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Sunday, July 08, 2018

映画『虹色デイズ』

【7月8日 記】 映画『虹色デイズ』を観てきた。

ここ数年、ちょっと食傷気味の漫画原作による青春恋愛ドラマだが、敬愛して已まない飯塚健監督の作品である。観ないわけには行かない。そして、期待を裏切らず、これは良かった。

年寄りの映画評論家が何と言うかは知らないが、中高生・大学生に是非観てほしい。そして、他の青春ドラマとどこが違っていたか、見終わった後で思い出してほしい。

キュンと来た台詞は何か?だけではない。ストーリーの進行には全く関係がないのだけれど、如何にもリアリティのある台詞はどの台詞だったか?

飯塚健監督得意の長回しに気づいたか? 長く回せば良いというものではない。その時、役者は止まっていたのか、動いていたのか?(あるいは役者が入れ替わることもある) 逆にカメラは止まっていたのか動いていたのか?

いや、派手な長回しだけではない。走るところ、逃げるところ、遠くから見ているところ──それぞれのシーンでカメラがどんな撮り方をしているかを感じてほしい。

若い人たちに是非ともそういうところをじっくりと観てほしいのである。

脚本は飯塚監督と根津理香。この男女の組合せで脚本を作ったことが大成功だったと思う。男には却々書けないシーン(たとえばハンドクリーム)、女には想像のつきにくいシーン(逆にこっちはどれがそれか僕には分からない)がたくさんあったのではないだろうか。

原作は少女漫画であるにもかかわらず男子4人を主人公にしたことで大ヒットし、“男子の本音がわかっちゃう No.1青春コミック”と言われたらしい。

冒頭からとても印象的な画だ。学校の、他に誰もいないプールに、制服のまま入って浮かんでいる男子4人。これは何だろう?と興味を引くオープニングだ。最初は水面付近にいたカメラが上からの画に切り替わると、夏の強い日差しに照らされて、4人の影がプールの底に、ゆらゆらと揺れながら黒々と映っている。

それから、時間は少し戻って、順番にプールに飛び込む男子のスローモーション。あれ? でも、3人の画しかないのは何故だ? ──それはもう一度時系列の中でこのシーンが出てきた時に判る。

この辺の作りは巧い。

筋は、面倒くさいので詳しく書かないが、要するに4人の男子と3人の女子の、高2の春から高3の春までの、主に恋愛をめぐる話だ。でも、三角関係はほとんどない(「ほとんど」と書いたところがミソなのだが)。

なっちゃん(佐野玲於)は杏奈(吉川愛)が好きなのに、却々自分の思いを伝えられない。杏奈にもなっちゃんの好意に応える気持ちがあるのに、同じように引っ込み思案でうまく言葉にできない。

杏奈の唯一の親友であるまり(恒松祐里)は杏奈を奪われるような気がして、なっちゃんの恋を妨害する。それを横から見ていたモテモテ男のまっつん(中川大志)は初めて真剣にまりに恋をする。

秀才でオタクのつよぽん(高杉真宙)には同じ趣味を持つゆきりん(堀田真由)という彼女がいる。彼女のことを考えると東京の大学に行くかどうか決心がつかない。

恵ちゃん(横浜流星)はひとりだけ恋をしていない。みんなのまとめ役的な役回り。4人ともそうだが、中でもこいつが一番いいヤツかもしれない。

そして、いつもジャージ姿のバレーボール部員・千葉ちゃん(坂東希)は、この7人からはやや脇に下がった役だが、台詞には書かれていないものの、なっちゃんに思いを寄せていることがなんとなく匂ってくる。

さらに、工事現場で働いているまりの兄に山田裕貴、高校の担任のガラの悪い教師に滝藤賢一が扮していて、この10人で芝居が回って行くのだが、10人が10人とも素晴らしい。

縁日のシーンで、あ、飯塚監督の長回しが来た!と思い、歩道橋のまりとまっつんのシーンでまた来た!と思い、最後の学園祭のプラネタリウムでのクライマックスで、これまた長い長い、途中からぐるぐる回る、まさに長回しがあって、ファンには嬉しい限りだ。

そして、音楽が素晴らしい。挿入される5曲(フジファブリック×2、阿部真央、Leola、SUPER BEAVER)と EDテーマの降谷建志の曲がいずれも良い曲である上に、見事にシーンとマッチしていた。

単に高校生の恋愛を描いた映画で、それ以外何が起きるわけでもないので、疲れた中高年の観客には物足りないかもしれない。でも、僕らはあの頃、ほんとうにああやって女の子のことばかり考えて毎日を暮らし明かして来たのも確かだ。

それが青春というものではないかな。そして、青春を映像に描き留めるのも映画監督の仕事である。

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