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Saturday, July 14, 2018

映画『焼肉ドラゴン』

【7月14日 記】 映画『焼肉ドラゴン』を観てきた。そもそもは鄭義信が書いた舞台で、数々の賞を獲ったらしいのだが、僕は知らなかった。今回はそれを鄭義信自身が初監督で映画化した。

演劇として、映画として、なにか新しい仕掛けがあるわけではない。1970年の大阪万博前後の在日の一家を描いた作品で、もちろん在日的なテーマは山盛りに入っているのだが、もう、なんかそういう括りをしても仕方がないような気にさせるドラマだ。

「人間ドラマ」という表現を、昔から僕はどうも奇異に感じていて、「人間が出ないドラマなんてあるのか?」「人間ドラマでないドラマって一体何?」と思うのだが、今回の映画はその逆で、人間が単位であることは間違いないのだが、人間が最小不可分な単位なのであって、日本人とか韓国人とか在日とか言っても仕方がないという意味での「人間ドラマ」であるように感じた。

日本に徴用された戦争で片腕をなくし、故国へ帰るチャンスも失った龍吉(キム・サンホ)と韓国から難を逃れて日本にたどり着いた英順(イ・ジョンウン)。お互いに子連れで再婚した2人は、伊丹空港近くのバラックで焼肉屋をやりながら暮らしている。

夫婦には4人の子がいる。長女の静花(真木よう子)は美人でしっかり者だが、少女時代に負った怪我で片足が不自由で、そのことを負い目に感じている。静花の幼馴染でずっと静花に思いを寄せてきた哲男(大泉洋)からの求婚も袖にしてしまう。

哲男はその思いを断ち切れないまま、静花の妹で、直情的で奔放な梨花(井上真央)と結婚する。三女の美花(桜庭みなみ)はプロ歌手を目指しており、彼女が舞台に立っているキャバレーのボーイで、既婚者の長谷川(大谷亮平)とつきあっている。

そして、唯一龍吉と英順の間に生まれた時生(大江晋平)は、名門の私立中学に通っているが、朝鮮人であることから学校でいじめられ、半ば不登校になり、口もきけなくなってしまっていた。

いやあ、みんな巧い。特に両親を演じた2人は韓国の有名な俳優らしいが、やはり韓国人ならではの、日本人とは明らかに違う感情表現にリアリティがある。

3人の娘がそれぞれに個性豊かで、これまた好演である。なんともはっきりしない、その場しのぎの解決を選んでしまう哲男を演じた大泉洋もこれまた見事なら、脇役で絡んでくる宇野祥平とハン・ドンギュも良い味を出している。

なんだか、映画と言う前にドラマなんだな、これが。

で、それぞれのカットが長いのである。次のシーンに変わるまでの余韻の取り方も長いように感じた。

もちろん、大泉洋とハン・ドンギュが飲み比べをするシーンや、お父さんの長い独白など、意図的にカットを割らず長い芝居を撮り切ったシーンもあるのだが、全体的に見て、長回し云々と言うよりも、なんかそこらへんの映画とは違うリズムで撮っている気がしてならない。

少年期を伊丹空港の近くで育ち、大阪万博の熱狂を身を以て経験した身からすると、ああ、そういうのあったなあ、という世界があり、それとは逆に、そうか、在日の人たちはそうだったのか、という世界があり、それからもっと長じてから知った北朝鮮への帰還運動などの事実も絡み、全く気を逸らされることなく一気に見終わってしまった。

台詞がよく書けているから、時々劇場内で短い笑いが沸き起こる。最後にみんなが、それぞれに新たな出発の準備をしながら集結するという展開も巧い。

とても良い映画であった。

この映画って、例えば日ごろから嫌韓ヘイトスピーチを繰り広げている人たちにはどう映るんだろうな、と変なことを考えてしまった。お父さん役とお母さん役の2人が、どこかの映画賞の男優賞・女優賞を獲れたらいいなあと、ふと思った。

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