『ふたたびの微分・積分』永野裕之(書評)
【6月28日 記】 「眠っていた数学脳がよみがえる!」というキャッチコピーがずっと気になっていた本なのだが、いざ読んでみるとひとつだけ残念だったことがあって、それは高校で習った微積分とほぼ同じ内容であったことである。そういう意味ではまさに題名のとおりである。
「自分は文系だったからこんなのは習っていない」と言う人も少なくないのかもしれないが、幸か不幸か、僕は文系だったけどこの辺りのことはほとんど高校で習った。もちろんそれらを全部憶えていたはずもないのだが、読み進むうちに結構甦ってくる。
かくして甦ったのは数学脳ではなくて、単に高校の数学の授業の思い出であったのかもしれない(笑)
ただ、高校の教科書に比べると、説明が丁寧で、式の展開もきわめてゆっくり進めてくれるので、何十年ぶりに微積分に取り組む年寄りにとっては極めて親切な本である。
式の展開のような、途中のところで訳が分からなくなって嫌になるというのは非常によくある話である。例えば m×n の行列式の方程式だったりすると、そんなことは頻繁にあった。
その点この本はいっぺんにたくさんのカッコを開いたり、いっぺんに多くの数式や数値を代入したりということがないので、いろんなことを確認しながらまさに牛歩の速度で進んで行けるのである(笑)
そしてそのうちに、これこそが数学の醍醐味だと僕は思うのだが、e や π が出てくるとやっぱりどうしようもなくワクワクしてしまう。僕としてはそこからもっと進めて、僕らが習ってこなかった「数の魔術」みたいなものに到達するのではないかと期待したのだが、そこまで行かずにこの本は終わっている。
でも、それくらいがちょうど良い塩梅なのかもしれない。
著者は「はじめに」で書いている:
私は本書を、むかし微分・積分を学んだことはあるもののてこずった記憶しかない方、あるいは文系だけれど「理系の」微分・積分に大いに興味を持っている方のために書きました。
と。まさにそれは僕のことである。
それにしても、二項定理や「奇数の奇跡」など、読めば読むほど興味は尽きない。だから、多分これは次の読書へと続く本なのだと思う。また数学の本を読んでみたい。
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