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Sunday, April 15, 2018

映画『娼年』

【4月15日 記】 映画『娼年』を観てきた。

『ボーイズ・オン・ザ・ラン』『何者』──この2本を挙げただけで三浦大輔が如何に力量のある映画監督かが分かる。だが、この人が性をメインのテーマにしたときはひどい。

「ひどい」と書いて誰かの怒りを買うのであれば、「僕とは到底合わない」と書き換えようか。何であれ『愛の渦』を観て心底げっそりした。人間の生におけるセックスの位置づけ、性の倫理観が決定的に僕とは相容れない。

だからこの映画も見ないでおこうかと思ったのだが観てしまった。やっぱり「ひどい」と言いたくなる。何というか、違うんだな。うん、違うとしか言いようがない。

最初に書いておくとこの映画には石田衣良の原作小説があり、映画と同じ三浦大輔演出、松坂桃李主演で舞台化もされて大ヒットしたのだそうだ。僕は原作も読んでいないし舞台も観ていないので、原作がひどいのか脚本がひどいのか、それとも映画の演出がひどいのかは分からない。

ああ、ゴメンナサイ。ひどいんじゃなくて僕と合わないという表現にしよう(笑)

主人公の森中領(松坂桃李)は東京の名門大学生だが大学に意義を見出せずにバーテンのバイトに明け暮れている。そこに現れた会員制クラブを運営している御堂静香(真飛聖)に誘われて、主に中年以上の女性の客を取る“娼年”となる。

どうも最初から納得が行かないのだ。

領は普段から「女なんてつまらない」と言っており、セックスもバカにしている感じだ。若い男がそんな心境に至っていることが僕には不思議である。映画を最後まで見終わっても納得感がない。

まあ良い。そんな若い男もいるだろう。でも、そんなことを言いながら冒頭のシーンではどこかで拾ったギャルとセックスをしているし、静香に誘われると「いいですよ」とついて行く。それは完璧に矛盾してはいないか?

いや、まあ良い。つまり、領の言っていることが全て本心であり正しい自己分析であるとは限らないということにしておこう。しかし、改めて考えると、この設定は要るのかな?

一日中セックスのことで頭が一杯になっている学生が誘われて大喜びで“娼年”になったが、実はそんな生易しいものではなく、多くの女性との交歓を経て領は成長して行く──という筋運びで全く問題ないようにも思えるのだが…。

で、そういう話だからセックス・シーンがふんだんに出てくるのだが、これがまあ何とも言えないくらい大げさで、今どき安物のAVでもかくまではあるまいと思えるほどの激しさ一辺倒である。思わず三浦監督に「アンタ、いつもそんなセックスしてんの?」と問いたくなる。ここまで来るともう滑稽の境地である。

そこではたと気づいた。この描き方は監督の悪意なのだろう。意図せざる悪意であるのかもしれないが、僕にとってはそれが悪意であることには変わりがない。

どうもセックスを一段低いものと見ているように思えて仕方がない。例えて言うなら、人がセックスをすること、セックスに溺れることに対して、「あ、ウンコちびることってあるよね。うん、誰でもたまにそんなことあるから気にしないでw」と言っているような描き方である。

人間が抱えている卑小なものとしてセックスを捉え、その矮小な行為に及ぶ人間を上の方から余裕こいて描いている感じ。そして、そういう歪んだ自意識を自覚しないために、逆にセックスをキレイゴト化しようとしているように見えるときもある。無用な単純化をしよとしているようにも見える。

違うんだよね。感覚の違いだから「違う」としか言いようがないのだけれど、性はもっと深くて謎めいていてどろどろと気持ち良いもので、ともかくその描き方では描けていないと僕は思う。

だから、ドラマに共感できなかった。それが全てだった。

パンフを読んだら監督のコメントがあった。「セックス描写をこれだけ積み重ねながらも、エロスでないものを描くことを貫き通した」って、アンタ、何考えてるんでしょうね。已んぬるかな。

ただ、静香の娘で言葉の不自由な咲良を演じた冨手麻妙がものすごく良かったことだけは書いておこう。この娘、『みんな!エスパーだよ!』(2015)の頃にはとてもぎこちなかったのが、最近では『クソ野郎と美しき世界』も含めて、すごく伸びたと思う。

話自体は悪い作品ではない。他の監督で観たかった。

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