一次と数次、一事が万事
【3月17日 記】 いつまでもハワイ島に行った時の話を書いているが、やっぱり海外に行くといろんなことに気づき、いろんなことに思い当たり、いろんなことを思い出して、いろんなことを考える。
これは帰国してから不意に思い出したのだが、昔は一次旅券というのと数次旅券というのがあった。
若い人はナニソレ??って言うだろうが、一次旅券というのは1回しか渡航できないパスポートである。あまり記憶が定かでないのだが、僕が生まれて初めて取得したパスポートも一次旅券であったような気がする。
何のためにわざわざ1回しか使えないパスポートを取るのか?と思うのは今の発想で、昔は逆だった。高いお金を払って何年も使えるパスポートを取る必要なんてあるのか?と。
「自分はもう二度と海外に行くことはないかもしれない」とまで思いつめた感じではなかったにしても、「じゃあ、次はいつ海外に行くのか?」「どこに行く予定があるのか?」と問われると答えられる人は少なかったのだ。
だからとりあえず今度の旅行でだけ使える旅券を取った。今みたいに10年間も有効じゃなかったこともあって、「とりあえず取っておこう」という発想にもたどり着かなかった。
数次旅券を取っても、それが有効な間にまたどこかへ行くかなあ、と考えると自信がなかったのである。
調べてみると、一次旅券というものがなくなったわけではないらしい。「旅券法上は残っているが例外的な運用になっている」と書いてある。
いずれにしても今じゃ旅券と言えば期間内なら何度でも行ける数次旅券のことであり、1回しか行けない旅券なんてありえない話で、一次旅券という名前が存在とともに消えてしまい、それに合わせて数次旅券という表現も消えてしまった。
人々の暮らしぶりが制度を変え、言葉を変えた典型事例だと思う。どうってことない話に思えるかも知れないけれど。
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