« 映画『シェイプ・オブ・ウォーター』 | Main | 『人魚の石』田辺青蛙(書評) »

Sunday, March 11, 2018

映画『坂道のアポロン』

【3月11日 記】 映画『坂道のアポロン』を観てきた。「このマンガがすごい!2009オンナ編」第1位に輝いたコミックスが原作で、すでにアニメ化もされているとのこと。

例によって三木孝浩監督だというだけで、そんなこともストーリーもろくに知らずに観に行ったのだが、主演男優2人の顔ぶれからてっきり女子高生しか来ていないと思っていたら、「おっさんお一人様」率が高くて驚いた。

で、この映画、ジャズを題材としており、舞台は1966年の佐世保だ。ただ、それがおっさん率が高い理由にはならない。その時代にジャズを体験した人は僕らよりひと周り上の世代で、つまり、そこが目当てなら「爺さんお一人様」率が上がるはずだ。

ジャズを題材としてはいるもののジャンルとしては音楽映画ではない。やはり三木孝浩監督お手の物の青春映画である。ただ、音楽の要素はかなり大きい。三木作品では『くちびるに歌を』も音楽モノだったが、今回は楽器が絡むのでハードルはかなり高い。

ジャズである。しかも、演奏が上手く見えなければならない。もちろん実際の音はプロが出しているので素晴らしい演奏が流れる。観客はそんなことは百も承知で観ているのだが、如何にも当て弾きしてるだけと映ったら興醒めである。

監督は最初から演奏のできる役者をということで、1年ほどドラムスを習ったことのある中川大志と、「ピアノが弾ける」という誤情報を掴まされた知念侑李を起用した。2人とも猛練習したのだろう。知念の躍動感溢れる指遣いと中川の堂に入ったスティック捌きがリアルで(撮り方も巧いんだけどね)、僕らは安心してドラマに没入できた。

家庭の事情でおばの家に引き取られて佐世保に転校してきた西見薫(知念侑李)。彼は医者になることを決められており、おばにもきつく当たられ居心地が悪い。好きなピアノを弾いていてもおばに咎められたりする。

同級生で授業も受けずに喧嘩ばかりしている川渕千太郎(中川大志)。彼は大勢の弟や妹たちに囲まれて貧乏な家庭で暮らしている。そして千太郎の幼馴染でクラス委員の迎律子(小松菜奈)。

律子の家はレコード店で、彼女の父親(中村梅雀)はアマチュアのベーシストであり、家の地下にスタジオを作っている。時々東京から帰ってくる大学生でトランペットを吹く桂木淳一(ディーン・フジオカ)と、ドラムスを叩く千太郎でよくセッションをしている。

薫はクラスメートと馴染めずにいたが、ひょんなことから千太郎に気に入られ、クラシックのレコードを買いに律子の店に行ったところを地下に連れて行かれてジャズを初体験する。

薫はそこで初めて聴いたアート・ブレイキーの "Moanin" のレコードを買って帰って、耳コピしながらピアノで弾いてみる。

序盤のそんな展開が非常にテンポよくて、観客もまるでそこに一緒にいるみたいに、音楽に乗って、物語に入って行ける。高橋泉の脚本が巧い。最後の、まさに「幕切れ」と言うべき終わり方も秀逸だと思う。

度肝を抜くようなカメラワーク、みたいなものは全然ないのだが、なんと言うか、いちいち切り取り方が巧い。

そして、やっぱり怒涛の演奏シーン。音楽は観客に多くを語りかける。

薫、千太郎、律子、淳一、それに東京から戻ってきた美大生・深堀百合香(真野恵里菜)を加えた5人に三角関係、と言うか四角関係と言うか、思った相手に思ってもらえないもどかしい思いが絡んで、そんなところから友情にヒビが入ったりもする。

監督曰く、これは薫と千太郎のラブ・ストーリーだ、と。その感じ、よく解る。

知念侑李って『忍びの国』の時に悪くないなと思ったのだが、非常に個性的な良い役者だ。知念と中川の2人ともが嵌り役だったと言える。

その2人に加えて、『僕は明日、昨日のきみとデートする』に続いて2回目の三木作品となる小松菜奈がこれまた良い。三木監督、絶対この女優が好きだと思う。どう撮ったら魅力的なのかちゃんと解っている気がする。

ともかく、この「青春の息吹」みたいな感じ、この監督にしか出せないだろうな、と例によって思う。60年代という時代がピンと来ないかも知れないが、是非とも(おっさんではなく)たくさんの若い人たちに観てほしいなあと思った。

|

« 映画『シェイプ・オブ・ウォーター』 | Main | 『人魚の石』田辺青蛙(書評) »

Comments

じいさんに近いおっさんが見にいってもいいでしょうか?
小松菜奈ちゃん好きです。

Posted by: 仙台のM | Monday, March 12, 2018 10:02

> 仙台のMさん

いいんじゃないでしょうか。主演は男優2人だけど、小松菜奈さん、可愛いです♡

Posted by: yama_eigh | Monday, March 12, 2018 10:20

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 映画『坂道のアポロン』:

« 映画『シェイプ・オブ・ウォーター』 | Main | 『人魚の石』田辺青蛙(書評) »