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Sunday, February 18, 2018

Virtual という単語の Reality

【2月18日記】 先月までやっていた「ことば」を中心テーマにしたホームページ Wardrobe of Words の流れで、ちょっと最近気になった言葉について書いてみます。

virtual reality などの virtual って、誰が最初に「仮想」と訳したのか知りませんが、あまり良い訳ではなかったんじゃないかな、と思うのです。

「仮想」と言われた途端に、なんか「本物ではない」という感じがしてしまうではないですか。ヴァーチャル・ナントカと聞いた途端に脳内に偽物感が充満してきませんか?

でも、virtual はむしろ「本物とほとんど変わらない」「実質上の」みたいなニュアンスの英単語なのです。

virtual = 仮想 と憶えていると、virtual reality は「頭の中だけで作り上げたインチキの現実」みたいな印象になってしまいますが、英語本来の持っているニュアンスからすると、「決して現実ではないのだけれど現実そっくりのもの」のほうが近いと思うのです。

「仮想」と言えば従来よく使われていた熟語に「仮想敵国」というのがあります。この「仮想」は何の訳かと思って調べてみたら、こちらは imagined enemy あるいは imaginary enemy でした。

そもそも virtual というのはコンピュータ用語として広まってきた言葉なので、はるか昔からある「仮想敵国」が virtual enemy であるはずはないのですが、逆に imagine の直訳であるとは知りませんでした。

これはこれでよく解ります。仮想敵国はまだ敵ではないのです。頭の中で作った敵です。まだ攻めて来てはいませんし、両国の関係が一触即発の危険領域にあるわけでもありません。

東西冷戦時代には、資本主義対社会主義という構造の中で、「戦争になるとしたら」という想定で置いてみたのが仮想敵国だったわけです。

でも、VR はすでに imagined あるいは imaginary という域を超えているのです。人間の想像力で構築できるぼんやりした世界の限界を超えて、コンピュータの力によって、現実に匹敵するほどの非現実世界が現前するようになったのです。

そういう意味では virtual は「超仮想」なのかもしれません。

そういう状況を意識せずに virtual という単語を仮想と訳しているようでは、この単語のリアリティが損なわれてしまうのではないかと、ふと思ったのでした。

ちなみに AR の A は augmented。これを拡張現実と訳すのは的確であるように思います。それだけに VR を仮想現実と訳してしまったことを惜しく感じる今日このごろです。

一方で AR を「拡張現実感」と訳す向きもあります。なるほど reality を「現実」ではなく「現実感」と訳すと語感がかなり違ってきますね。VR も「仮想現実感」ならそれほどの違和感なく受け止められます。

そういうところに翻訳の鍵があるのかもしれません。翻訳って難しいですね。

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