『JKハルは異世界で娼婦になった』平鳥コウ(書評)
【2月14日記】 Web で連載されて随分評判になった異世界転生小説だと聞いて興味を持ち、Kindle に落として読んだのだが、端的に言うと、「なんじゃ、こりゃ?」という感じ。
JKのハルが交通事故に遭う。彼女を庇おうとして一緒に死んでしまった同級生で“陰キャ”の千葉セイジと一緒に、気がついたら異世界にいたという話。
そこはとんでもない“男尊&女卑”の世界で、千葉は何だか知らないけどチート能力を持っていて冒険者になって、結構上の地位まで上がって行く。ところがハルには何の能力もないので娼館で働くしかなかったのだが、そこでハルはハルなりのやり方で頭角を表して行く。
で、娼婦の話なので当然セックスの描写がふんだんに出てくるのだが、それがあまりにモロな表現のオンパレードなので、読むほうからしたらポルノにも官能小説にもなってくれない。
文章はほとんどが会話(しかも、JK らしい表現による会話)で、深い描写や洒落た表現があるでもなく、異世界の構造もなんとなく幼稚で薄っぺらい。
んでもって、「おいおい、これで終わりかよ」と思ったら実はその後に短くない続きがあり、まだ続くと安心してたら急に、「おいおい、それで終わっちゃうのかよ」という終わり方なのである。
ドラマツルギーを創生するとか、撒いた伏線を回収するとか、そういう伝統的な手法を著者は全く重んずる気がないのである。
しかし、では途中で読むのをやめたくなるような本かと言えば、これがさにあらず、割合面白いから不思議である。ある種のどんでん返しみたいなものもちゃんと用意されている。
JK のたわいないおしゃべりと異世界の冒険譚が合わさったような構成。
しかし、では「ああ、面白かった!」というほどの本かと言えば、それほどでもないのがこれまた面白いところだ。
結局のところ、この小説がどうして Web上でそんなに評判になったのか、そこが一番興味の湧くところだ。結局分からないのだけれど(笑)
まあ、異色の小説であることは間違いない。楽しめたか楽しめなかったかと言われれば楽しめたほうだ。
あとがきで著者が「著者に青少年保護育成条例を否定する意図はございません」と書いているのが妙におかしかった。ま、確かにそんな意図を持って書かれた小説でないことは間違いない。
これは「楽しむ小説」とひと言で言えてしまう小説なんだろうな、と思う。はい、僕みたいな年の者でもかろうじて楽しめましたよ(笑)
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