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Saturday, January 27, 2018

映画『嘘を愛する女』

【1月27日記】 映画『嘘を愛する女』を観てきた。僕は大体監督で映画を選んでいるが、これは予告編を見て面白そうだったから、というパタン。

監督は CMディレクターとしては既に実績のある中江和仁。TSUTAYS CREATOR'S PROGRAM (TCP) FILM 2015 に応募してグランプリを獲得した企画を自らメガホンを取って映像化したとのこと。

5年間も同棲していた由加利(長澤まさみ)と桔平(高橋一生)。だが、ある日桔平がクモ膜下出血で倒れ意識不明になった時、彼の名前も仕事も全部嘘であったことが発覚した、というストーリー。

もう少しサスペンス風のドラマかと思ったら、そういう色合いではなかった。

東日本大震災の日に2人は出遭う。気分が悪くなってへたりこんだ由加利を、通りがかった医者である(これも後に本当に医者だったのかどうかも分からなくなるのだが)桔平が介護したのがきっかけ。

通りがかりに由加利の様子がおかしいのに気づいて、逡巡しながら近づいてくる桔平のスニーカーのアップ。──この辺の演出は大変巧い。単にへたりこんだ由加利の視線の高さということだけではなく、この靴が後に二重、三重に効いてくる。

由加利はいわゆるキャリア・ウーマン。それもひょっとしたら2年連続で“ウーマン・オブ・ザ・イヤー”に選ばれようかという、かなり成功した女性。

そういう経歴がそうさせたのか、あるいは生まれついての性格なのか、由加利は何があっても謝らない。フツーの人間なら誰もがとりあえず謝っておくポイントで彼女は決して謝らない。終盤になって漸く頭を下げるシーンが出てくるが、無言であり、決して口に出しては謝罪しない。

そういう彼女の性格を見せるために、本来なら謝るべきであるシチュエーションを脚本は何箇所か用意している。この辺りの進行も相当巧い(脚本は中江監督と近藤希実の共同)。それに応えた長澤まさみの嫌な女っぷりも見事であるが。

由加利は親友のおじで探偵業を営んでいる海原(吉田鋼太郎)に桔平の過去を調べてもらうことにする。

その海原の背景にもドラマが仕込まれており、海原の助手・木村(DAIGO)や、倒れる前の桔平を知っていた心葉(川栄李奈)も個性豊かに絡んでくる。前半の東京を舞台とした芝居から、後半はロードムービー風に転ずるところも鮮やか。

却々良い出来の映画ではないか。

ただ、終盤に仰天するほどの展開があるでもなく、最後は何であれ多分そんな風に持っていくしかないな、というやや凡庸なところに結しており、そういう意味ではあまり僕が好きな類の映画ではない。

ただ、パンフレットのインタビューを読むと、この監督、初めからかなり綿密に練った通りに、いろんなプランひとつひとつ着実に実現しているのが判る。

ことほどさように優れた企画/脚本だったから、超売れっ子の長澤まさみと高橋一生がキャスティングできたのかもしれない。そして、この企画が選ばれた TCP の審査員だった黒木瞳が、小汚い飲み屋の女将役を自ら買って出たとのこと。この黒木もなかなかの新機軸だった。

ただ、このタイトルのつけ方は巧くないなと思った。意味が非常に分かりにくい。原型となった企画のタイトルは『嘘と寝た女』だったとか。まだそのほうが良くないだろうか?

いずれにしても、かなり実力のあるディレクターである。今後が楽しみではないか。

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