『祈りの幕が下りる時』マスコミ試写会
【12月11日特記】 映画『祈りの幕が下りる時』のマスコミ試写会に行ってきた。東野圭吾原作で、阿部寛の当たり芸となった「新参者」シリーズである。
最初のテレビ・ドラマ・シリーズは全回観た。その後の単発ドラマ『赤い指』も観た。それに続く劇場版『麒麟の翼』も観た。その後のテレビのスペシャル『眠りの森』は観ていないと思う、多分。
映画が始まってすぐに思ったのは、あれから何年経ったのだろう?ということ。と言うのも、最初に出てきたのが阿部寛が演じる日本橋署の刑事・加賀恭一郎ではなく、加賀のいとこであり、捜査一課刑事の松宮脩平(溝端淳平)だったから。
あの頃はいかにも新米刑事という感じだった松宮が、めっきり刑事らしくなっているではないか!
調べてみるとテレビの初回が2010年10月。この7年の俳優・溝端淳平自身の成長と松宮刑事の成長が重なって見えてくるところが面白い。
そういう意味で、テレビのレギュラーと単発、そして映画をずっと観てきた者にとってはシリーズものならではの楽しみがある。
既に亡くなっている恭一郎の父親・隆正(山﨑努)が出て来る。そして、隆正の世話をしていた金森看護師(田中麗奈)が出て来る。この女は誰だっけ?と一瞬考えながら観ていて、そうだ、父親に代わって将棋を指していたあの看護師だと気づく。
そして、恭一郎がどういう思いから日本橋界隈の「新参者」となったのかということが、この映画で初めて語られる。テレビ時代からのファンにしてみれば「なぁるほど」という世界である。
ただ、その一方で、ストーリーの中心は恭一郎だが、捜査を進めて謎を順に解明して行く役割は松宮が担っていることもあって、これまでの「いかにも加賀恭一郎的な捜査の仕方」を前面に出すのは少し抑えて、初めて見る人にも拒否感のないように仕上げてあるとも言える。
「“泣ける”感動巨編」などという売り方をする映画は全く僕の趣味ではないのだが、でも、非常によく練られた筋で(人間関係が複雑すぎて最初の頃は頭の中混乱しながら観ていたのも確かだが)、まあ良質の娯楽作品と言って良いのではないかな。
容疑者(あるいは重要な鍵を握る人物)の似顔絵が出て来るのだが、これが微妙に誰にも似ていなくて適度に誰にでも似てる辺りがテクニックとして非常に巧く、観ている者の興味を途中で逸らせてしまわない。
逆にこの手の映画は最初から多分こいつが犯人なのだろうなというのを充分に匂わせていて、えっ、こんな奴が犯人なの!?という驚きはない。もちろん制作側もストーリーを無理やりこねくり回して観客を欺こうとは思っていない。
今回は松宮が恭一郎の勘と洞察力を借りながら、順に事実を暴き出して行く過程が面白く、そういう意味でよく構成されていたと思う。特に恭一郎が「まだ調べられていない関係者は俺か!」と気づく辺りが面白い。
そして、まあ、見れば解ると思うけれど、『砂の器』(松本清張原作、野村芳太郎監督、1974年)に対するオマージュたっぷりの作品である。
重要な登場人物である松嶋菜々子の少女時代を桜田ひよりと飯豊まりえがそれぞれ好演している。それから小さな役だけれど、音尾琢真の演技が異彩を放っている。
泣かなくても楽しめる映画なんじゃないかな、と僕は思うのだが(笑) 来年1月27日公開。
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