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Tuesday, August 22, 2017

映画『東京喰種』

【8月22日特記】 映画『東京喰種』を観てきた。原作は累計 3,000万部を超える大ヒット漫画だと言うが、いつものことだが、僕はこの映画の予告編を見るまでその存在さえ知らなかった。

どうも僕には『寄生獣』のイメージがあって、これも人を喰う喰種(グール)と人間との壮絶な戦いのドラマかと思っていたのだがそうではなかった。「半喰種」になってしまったカネキ(窪田正孝)の言わば苦悩を描いたドラマだ。

生まれてこの方ずっと人を喰ってきた喰種ならいざ知らず、昨日まで親友だった男がもはや自分の食糧でしかなく、しかも、水とコーヒー以外人間の食べるものは一切受けつけず、罪もない人たちを殺して喰うしか生きていく術がない。

──ある日突然そんなことになってしまったら、いくらなんでもすぐに人間を食い漁る生活に転じるほどの割り切りに到達するのは困難だろう。

この作品は一見人間社会のさまざまな対立を比喩的に映し出しているようにも思えるのだが、しかし、喰う者と喰われるモノという関係がある以上、この対立だけは決して解決できない。──それこそが、この物語、この設定が優れている点であり、一種のトリックである。

CCG(喰種対策局)の捜査官・真戸を演じているのが大泉洋なのだが、彼自身は自分の正義を徹底的に追求している鉄の意志の男であり、職種としても正義と体制の担い手であるのだが、大泉本人や監督も言っているように、この役がどうしても「悪役」に見えてくる。

その辺りは完全に我々がトリックに嵌ってしまっている証拠である。

映像ははっきり言ってかなりグロい。もちろん作品として必要なグロさではあるが。

最初のカットは窪田正孝の片目の、画面いっぱいのアップ。結構脅しの効いたオープニングであり、片目だけというところに意味があって、その後の展開に繋げるシーンでもある。

この映画は目や唇などの「どアップ」を繰り返し観客に突きつけて度肝を抜こうとする。それは単純なテクニックかも知れないが、却々巧い。

で、あとは特撮である。喰種が「赫子」と呼ばれる化け物的な捕食器官をにょきにょきと出すシーン。それで人間をいたぶり殺すシーン。喰種の仲間であるトーカ(清水富美加)がカネキを鍛えるシーン。人間と喰種の殺し合いのシーン。

全く知らないで言うのだが、多分原作はもっともっと込み入って長いのだろう。でも、その長いドラマを凝縮しようとするのではなく、ごく一部を切り取る選択をしたのは成功だと思う。

おかげでこの映画は見終わっても何かが解決した感じがどこにもない。でも、そういう形で放置するからこそ、我々はいろんなことを考えてしまうのである。

監督も脚本も撮影も、僕のほとんど知らない、あるいはあまり馴染みのない人たちだ。監督の萩原健太郎は CM やショート・フィルムを撮ってきた人で、これが長編デビュー作だそうだ。

確かに CM 出身者らしい瞬発力があるが、全体としても衒いもなく観ていて妙な引っかかりがないのが良い。

で、それにしても清水富美加って良い女優だなあと改めて思った。窪田正孝が役柄上ややオーバー気味の演技になっているのに対して、清水はずっと抑えた語り口で、そこに怒りや憎しみや苛立ちや嫉妬や、いろんなものが浮かんでくる。

でも、さすがにこの映画と『暗黒女子』とに連続出演したら、出家したくなってもしょうがないかな、などと変なことを考えてしまった(笑)

しかし、一番驚いたのは、平日の夜とは言え、2階席のある巨大スクリーンの映画館に観客が4~5人しかいなかったこと。やっぱりグロいからか? でも、こんなに人気のない所にいたら、喰種に襲われても誰も助けてくれないだろう。

いや、「にんきのない」ではなく「ひとけのない」と読んでね(笑)

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