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Sunday, July 09, 2017

映画『逆光の頃』

【7月9日特記】 映画『逆光の頃』を観てきた。

例によってタナカカツキによる原作の漫画は読んだことがない。けれど、これは多分原作が素晴らしいのだろうな、と思った。その原作を高校時代に読んでなんとか映像化したいと思っていた小林啓一が監督。

小林啓一はいろいろ賞も獲っている新進監督、と思ったら、この人もう45歳である。今回は原作から3つのエピソードを選んで映画化している。上映時間1時間ほどの小品である。

舞台は京都。主人公は17歳の高校生・赤田孝豊(高杉真宙)。ストーリーは彼の日常。ドラマティックなところはあまりない。

原作も少ないト書きと少ない台詞で有名だったようだが、この映画も間を大切にして、映像と生活音で孝豊の日常を丹念に伝えている。

特に音が良い。冒頭のシーンの風鈴から始まって、自転車で風を切る音、雨の音、警備員の鼻歌。そこに京都のきれいな景色や建物、そして風物が乗っかってくる。大文字、大きな月、金の糸…。

ときどきびっくりするような良い画がある。何も起きていないようでいて、エピソードの運びが絶妙である。

ただ、出演者に関西出身者がいないので、語られる京都弁がずっと気持ち悪い。そんな中で孝豊のクラスメート(であり、淡い恋の相手)のみことを演じた葵わかなだけは見事な京都弁だった。

この娘はやっぱり勘が良いのだろうなと思う。4年前の『陽だまりの彼女』の時から逸材だと思ったけれど、あれよあれよと言う間にNHK朝の連ドラのヒロインである。何をやらせてもすぐに覚えるんじゃないかな、と思ってしまう。

この映画でのみこともほんとに瑞々しくて魅力的だ。

そして、孝豊のクラスメートでロックバンドをやっている公平に『ソロモンの偽証』の清水尋也、不良の小島に金子大地、孝豊の姉に佐津川愛美が扮している。

アニメが出てくるのがどうにも違和感があったが、それ以外はとても良い映画だった。見事に余白を語っている感がある。

原作者が監督との対談で言っている。

この映画、多感な中高生にも観てもらいたいですよね。「よう分からんもの」を観る体験もしてほしいから。

その「よう分からんもの」を絵にした原作者も大したものだが、それを映像にした監督・スタッフ・キャストも大したものだと思った。

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