『ポケモンGOは終わらない』西田宗千佳(書評)
【6月27日特記】 リリースから1年が過ぎて、いまだにポケモンGO を続けているのは50代以上だけだという説がある。確かに僕は続けているけれど、それが何か?という感じである。だって面白いのである。
そして、この本はこのゲームのどこが、このゲームの裏側にあるどういう思想がそれを実現しているのかをよく見抜いていると思う。
去年の11月に出た本である。何を今頃と思われる方もあるだろう。twitter で繋がっている西田さんによると、彼は今まさにポケモンGO1周年に関する記事を書いているのだそうである。
しかし、ややブームが去ったと言われているこの時期になってこの本を読んでも、まったく色褪せた感がないのがこの本のすごいところではないだろうか?
それほど「目から鱗」のことが書いてあるわけではない。ポケモンGO の特徴的な要素である位置情報ゲームと AR を中心にこのゲームの本質について丁寧な解説が続く。
びっくりするような結論や予測が書いてあるわけではない。でも、読者はいつのまにか著者の分析に乗ってテクノロジーと人との関係を読み解いているのである。
なぜ「実世界」にポケモンが出ると、ここまで人々が熱狂するのか? それは、ポケモンGO がスマートフォン向けのゲームであること以前に「ポケモンであった」からだ。
AR の本質は、脳内の「妄想」が持つリアリティを、現実と感じられるほどまで高められるということにある、と筆者は考えている。
摩擦が起きるとそれを問題視し、「あってはならない」と日本人は考えがちだが、完璧に問題が起きない状況があり得ないことを考えると、「グーグル的」な解決方法は現実解であり、論理的なやり方ともいえる。
ここでも、パートナーシップによる自治体や自社への利益そのものが目的ではなく、「ゲームを楽しむ人々へのホスピタリティ」が重要である、という姿勢が見える。
冷静で的確な指摘が並んでいると僕は思う。1周年に関する記事も楽しみである。
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