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Thursday, May 04, 2017

映画『無限の住人』

【5月4日特記】 映画『無限の住人』を観てきた。

三池崇史監督の映画を見るのは久しぶりだ。見る前からこれは如何にも三池崇史だという映画である。ただ、今回は三池監督目当てではない。無論不死身の侍を演じたキムタクが見たかったわけでもない。目当ては杉咲花だった。

子役出身だが、僕は2013年の TBS 金ドラ『夜行観覧車』で初めて名前を憶えた。目がいい。これは只者ではないなと思った。山口智充と親子の役でやっている味の素 Cook Do の CM も非常に好印象。去年の映画『湯を沸かすほどの熱い愛』も素晴らしかった。

この映画でも彼女の魅力は十全に発揮されている。役名の通り凛としている。そのようにカメラが撮っているとも言える。やはり、目の動きがいい。二役なのだが、上手に変化をつけて本当に別人に見える。

この映画はある意味木村拓哉ではなく杉咲花の映画になったと言って過言ではない。

身長が 153cm しかないところが、この映画では大きなポイント。キムタクとの身長差が、そのまま観客にまで「守ってやらなければ」という気持ちを起こさせる。

鮮やかな着物の色が良く映えている。この映画には彼女の他にも戸田恵梨香、栗山千明、山本陽子ら何人かの女優が出ているが、その中で唯一暖色系のコスチュームを宛てがわれている。映画を作る上でこういうところは非常に巧いと思う。

さて、時代劇でバッタバッタと何人も斬り倒すシーンは当たり前だが、現実にはありえないとよく言われる。

まず、脂と血で刀が切れなくなる。刃こぼれもする。ならば敵の刀を奪っては斬るを繰り返せば良いのだが、しかし、さすがに疲れてくる。

100人斬りをするためには100人に致命傷を負わせて自分は無傷である必要がある。自分も傷を負ってしまうと必然的に動きが鈍くなり、やられる可能性が高くなるから。

だから、現実には何人か斬り倒したところで斬られて死ぬのがフツーである。そんなに斬り続けられるわけがない。

──ということになるのだが、だったら斬られても死ななければ良いではないか、というのがこの物語の設定である。なるほどよく考えたと思う(笑) そして、そんな役は木村拓哉にぴったりではないか。

強すぎるヒーローというのはテレビや映画ではよくあることで、ジョン・ウェインだって、長谷川一夫だってその道を歩んできた。大事なのはそんな設定の中でどれほど自分の個性と存在感をアピールできるかである。

この映画では、死にはしないが痛みはある設定なので、その辺りに演じ甲斐が出てくる。死ねない者の苦悩も表現できる。

三池監督のオリジナルかと思ったら、原作があった。19年間連載され30巻も出版されている漫画なのだそうだ。三池監督は原作に対するリスペクトを標榜してるようで、パンフに載っていた原画を見ると、確かにイメージは近い。

ただ、杉咲花の、三つ編みの端に白いリングというのは映画オリジナルなのかな? これ、可愛くてとても良かった。

さて、ストーリーの中心は道場主の父親と母親を殺された凛(杉咲花)が不死身の用心棒・万次(木村拓哉)を雇って復讐の旅に出る話。万次は何故凛に加担したかと言えば、凛が自分の愚かな行動から死なせてしまった妹・町(杉咲花)にそっくりだから(彼は既にそれから50年生きている)。

映画の大半は斬り合いである。それもとんでもなく多勢に無勢の、壮絶な斬り合い。殺陣が途切れない。1つのカットが長い。真剣ではないとはいえ、長いものをあんなスピードで振り回すのは大変危ないし、ものすごい量の練習が必要だったはずだ。

もちろん、出演者の運動神経の良さもあるのだろうが、これだけのシーンが撮れるのはやはり三池崇史だなあと思う。カメラワークも見事に計算されている。自身が撮った『クローズZERO』や『十三人の刺客』を凌ぐ強烈な集団アクション・シーンだと思った。

また、殺陣だけではなく、万次が自分の過去を凛に語るシーンや、予告編にあった凛が「私を斬ろうとする奴を斬って」というシーンは構図的にも素晴らしくて、意外にグッと来てしまった。

で、観ていてふと気づいたのだが、これは時代劇の『亜人』である。もっとも、こちらのほうは不死身になった原因がきっちり示されているのと、元々が剣の達人であったという設定がかなり異なるのだが。

生きる苦悩とか社会の矛盾とか、そういうものをあまり汲み取らなくて良いと思う。最初から木村拓哉を想定しての映画化だったようで、まさにキムタク向きの、キムタクの魅力を存分に発揮した痛快時代劇である。

荒唐無稽な設定ではあるが、これはこれで良いと思う。とても面白かった。

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