健康診断に思う
【4月12日特記】 今日、健康診断を受けた。体重は前回の値より 1kg 以上増えていた。でも、問診の医者はそのデータを見て、「体重も前回と大きく変わっていませんね」と言った。とても珍しいことである。
少なからざる医者がこんな時「体重が前回より 1kg も増えています。いけませんね」みたいな調子でものを言う。「そもそも標準体重より重いわけですから、さらに 1kg 太るなんて飛んでもないことですよ」と調子に乗って畳み掛ける医者もいる。
僕は心の中で「お前らの仕事は楽でいいよな」と思う。点と点を比較すれば良いのだ。「今回の値から前回の値を引き算して良いの悪いの言っていれば済む気楽な商売だな」と口には出さず思っている。
僕は原則として毎日体重を測っている。そしてそれをグラフにしている。僕は自分の体重が最大 1.4kg の幅で前日の値から増減することに気がついている。一方でグラフ化することによって長期的な趨勢にも気づいている。
日々の体重は細かく変動しながら、長期で見ると大きな傾向に従っている。現在の僕の場合は年初から増加傾向にあった体重が漸くピークに達して、今ゆっくりと減少傾向に転じていることを把握している。
そういう人間に如何にも非難がましく「前回より 1kg 増えた」と指摘する医者の言葉が響くはずがない。
医者は言うかもしれない。「しかし、我々としては前回の値と比較するしか方法がない」と。それはそうかもしれない。しかし、そこから先のものの言い方がある。「前回より 1kg ほど増えていますが?」と疑問形にするだけで随分良い言い方になるはずだ。
医者の中には「患者を甘やかしてはいけない」というような考え方をする人もいるのだろう。そういう医者に対しては僕は「医師を甘やかしてはいけない」と考えてしまう。悪感情は伝染して反射するものである。
僕は医者は基本的にサービス業だと思っているが、「だから客である患者を大切にしろ」というようなことを言いたいのではない。むしろ僕が思っているのはもっと意地が悪いことかもしれない。
──「あんたのその言い方では人の心は動かないよ」ということなのだから。
「医者はサービス業なんかじゃない。医は仁術なり、だ」と言うのであれば、それはそれで立派な心がけだ。仁術であれば人の心も動かせるだろう。
今日の問診の医者の言うことなら、僕は素直に聞けそうな気がする。点と点で比較する場合、どれくらい大きな開きがある時に問題にするべきなのかを把握している先生なのである。
良薬は口に苦しという古い諺があるが、良い医者の言葉は必ずしも耳障りなものではないはずだ。患者の耳にすっと入ってくる言葉で語ることのできるお医者さんも日本には少なからずいるのである。
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