アポロ
【4月15日特記】 テレビを見ていたらポルノグラフィティの1999年のデビュー曲『アポロ』が流れてきた。
この歌は僕にとって衝撃的な歌だった。
僕らの生まれてくるずっとずっと前にはもう
アポロ11号は月に行ってたって言うのに
(詞:ハルイチ、曲:ak.homma)
君らはアポロ計画も月面着陸も、アームストロング船長の「人類にとっては大きな飛躍」も知らないのか! 僕は大きな世代ギャップを感じた。
先日みうらじゅんが1970年の大阪万博に触れて、「あれぐらいしか僕らの世代は、自慢するものがなくてね」と言っていたが、まさにその通りだと思う。戦後も安保も一服して、僕らは「人類の進歩と調和」に踊った(あえて踊らされたとは言わない)世代だ。
それくらいしか信じるものはなかったとも言える。でも、科学の進歩に支えられた明るい未来をいつも夢見て育ってきたとも言える。未来とは切れ目なく直線的に発展するものであった。
その象徴が1969年の月面着陸であり、翌年の万博に展示された「月の石」だった。僕らはひょっとしたら自分もいつかは宇宙旅行に行けるかもしれないと思った。
そんな時代のことを、今の若い世代は知らない。それは彼らにとって歴史的事実でしかない、ということをこの歌で思い知らされて衝撃を受けたのだが、今日この歌を聞き直して改めて気がついたのは、そうか、君たちはひょっとしたら生涯、人が月面に降り立つのを見ることがないのかもしれないのか、ということだ。
僕らは、多分アポロ30号ぐらいになったら月面に基地ができて、やがて人類は火星にも降り立つだろうと思っていた。
戦争という大きな断層を乗り越えて、日本は、いや、世界は連続的な進歩の段階に移行した、と僕らは思っていた。連続的な世界になったからこそ、僕らは直線的に未来を夢見た。
でも、必ずしも全てがそうではないのである。月面着陸はある特定の世代の、特別に思い入れのある出来事に終わったのである。
そして、やがて、『アポロ』という歌の存在さえ知らない世代が、大人になって世界を動かして行くのだろう。
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