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Sunday, April 30, 2017

映画『笑う招き猫』

【4月30日特記】 映画『笑う招き猫』を観てきた。

飯塚健監督の映画は2作目の『放郷物語』(2006年)以来ほぼ全部観ている。テレビのシリーズも『荒川アンダーザブリッジ』(全10話)、『REPLAY&DESTROY』(全8話)、『ランドリー茅ヶ崎』(全4話)、そしてこの『笑う招き猫』(全4話)も全て観ている。そのくらいのファンだ。

で、テレビと映画の両方をやったのは『荒川アンダーザブリッジ』と『笑う招き猫』なのだが、『笑う招き猫』のテレビ・シリーズのほうはあまり面白くなかった。いや、面白いと言えば面白いのだが、言わばミニマル的な面白さである。

映画版のスピンアウト企画を先行してテレビでやった形なので、これが映画化の前宣伝になったかと言うと疑問で、テレビドラマを観てしまったために映画館に行くのをやめた人もいるのではないかと心配するぐらいである。

結論から言うと、この映画版にはちゃんとストーリーがある(笑) 原作はすばる新人賞を獲得した同名の小説である。

主人公はアカコ(松井玲奈)とヒトミ(清水富美加)。2人は売れない漫才コンビ。この2人の27歳~28歳を、大学時代のフラッシュバックを挟みながら描いている。小さく笑えるところはたくさんある。

苦労の末、2人はお笑いスターになりました、という成功譚ではない。いや、まあ、終盤少しは売れてくるが、主に描かれるのはむしろウケない、売れない、食えない、それ故何度も仲違いする2人である。

それほど大きな事件があるわけではない。細々としたエピソードで繋いで行く映画だ。だが、その個々のエピソードを構成して行く共演者がとても良い。

蔵前(落合モトキ)と大島先輩(荒井敦史)はテレビ版にも出ていた、2人の地元友だちである。テレビ版の最終話に出てきた和田(浜野謙太)と土井(前野朋哉)も重要なキャラである。この辺りはテレビを見ていた人にはキャラ設定が頭に入っていて随分楽しめたと思う。

そして、彼らのマネージャー永吉(角田晃広)と事務所社長の岩倉(岩松了)、ヒトミの両親(菅原大吉、戸田恵子)、ヒトミのバイト先の弁当屋のおやじ(諏訪太朗)、先輩漫才コンビのきんぴら(なすなかにし)──この辺の脇役がとても良い按配で絡んで、ドラマはとても良い話になっている。

いつも通り、飯塚監督は役者にプレッシャーのかかる長い芝居をさせて、良い演技を引き出している。監督自身による脚本も、いつものテンポがあり、遊びもたっぷりあり、肝心なところでの冴えもある。「負けんじゃねーぞ」という決めの台詞が結構響くじゃないか。

そして、最後のアカコとヒトミの漫才が本当に面白くて笑える(漫才指導はなすなかにし)ところが良い。

感動の巨編でもなく、度肝を抜く映像でもないが、ちょっと遅めの青春映画で、後味の良い、善良な作品に仕上がったのではないかと思う。心がほんわり暖かくなった。

ところで、高橋真唯が岩井堂聖子に改名していたことを、この映画で初めて知った。これが本名なのだそうである。

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