『クロノス』
【4月7日特記】 WOWOW から録画してあった『クロノス』を観た。ギレルモ・デル・トロ監督の長編デビュー作。
ウチは夫婦揃ってデル・トロ監督のファンである。2006年の『パンズ・ラビリンス』に衝撃を受け、2013年の『パシフィック・リム』、2015年の『クリムゾン・ピーク』と観てきた。
その間に彼が脚本を手掛けた『ホビット』シリーズ3本も見ている。ただ、デル・トロが『ホビット』を書くというのは、喩えて言うならジャン=ピエール・ジュネが『エイリアン4』を撮るような軽い違和感がある。
『パシフィック・リム』のような言わば「半SF」的な作品も面白かったが、この監督はやはり『パンズ・ラビリンス』や『クリムゾン・ピーク』のようなゴシックなホラーものが面白い。そういう意味でこの『クロノス』はそこへ直結する色合いの作品である。
16世紀にとある錬金術師が作り上げたクロノスという機械を手に入れた古物商の話。その金色の機械を使うと永遠の命が得られるのだが、当の骨董屋の老人ヘスス(フェデリコ・ルッピ)はそんなことは全く知らない。
知らないままにそれを手の平に載せると、金色の機械から昆虫の足のようなものが何本も出てがっしりと体に吸い付いた上に触肢のようなもので何かを注入されてしまう。このあたりのギミックがいかにもデル・トロらしくて怖い。
一方、その機械の存在を知って追い求めてきた大富豪とその甥にしつこくつきまとわれ、果ては命まで狙われるハメになる。この甥を演じているのが、上で触れたジャン=ピエール・ジュネとデル・トロの両監督の作品の常連のロン・パールマンで、この体躯と風貌だけですでに不吉で恐ろしい。
そして、古物商の幼い孫娘が、ひと言も喋らず(恐らく自閉症という設定なのだと思う)、祖父が機械に噛みつかれたときも、大男に殺されそうになったときも暫しじっと見ているという設定がこれまた怖い。
永遠の命を得るための代償もこれまた怖い。古物商の末路もこれまた無残である。ひとつひとつのカットでそれぞれの画の切り取り方が秀逸である。
設定は単純だが、ギレルモ・デル・トロの原点という感じのする映画。ファンならば見て損はないと思う。
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