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Monday, March 20, 2017

『3月のライオン 前編』

【3月20日特記】 映画『3月のライオン 前編』を観てきた。

僕は大友啓史監督の NHK時代のドラマをほとんど観たことがなくて、それゆえ近年の『るろうに剣心』3部作と『秘密』のイメージが強かったのだが、この映画はアクションも SF もまるでなくて、なんと地味な将棋がテーマだ。

いや、羽海野チカの原作漫画のほうはどうなのか知らないが、少なくとも映画の中で将棋は中心には据えられていない。僕みたいな小学校卒業以来将棋を指したことがない人間が見ていても全然困らない展開だ。

日本将棋連盟が協力しているくらいだから、恐らく映画の中でプロの将棋としての辻褄は合っているのだろうけれど、将棋好きが「おっ、次の手はそう来たか!」と膝を打つような作りにはなっていない。

盤面が映るのはほとんど短いカットだ。しかも、全体が映るカットは少ない。将棋の駒のアップであることも多い。逆に、使い込まれた盤面のざらついた質感がこんなに伝わってくる画も珍しいと思った。

それよりも棋士の顔をアップで撮る。そして、劇中いろんな棋士によって何度も何度も繰り返される「負けました」の台詞。これがとても印象的だった。将棋は負けを認めた棋士のこのひと言で終わるのである。

さて、将棋がそれほど中心にはないと言いながら、では何があるのかと言えば、さりとて将棋以外にはほとんど何もないとも言える。人間ドラマ、などと言うとあまりに安易だが、言うならば将棋以外に何もない人たちの熱いドラマがあるのである。

主人公は零(神木隆之介)。「何もない」に通じるこのネーミングはとてもうまい。小学生の時に両親と妹が事故でなくなり、父の親友だったプロ棋士・幸田(豊川悦司)に引き取られる。

「将棋は好きか」と訊かれ、引き取って育ててもらうために「好きです」と答える。

幸田の一家は揃って将棋しかない人たち。A級崖っぷちの父親と、ともにプロ棋士を目指す香子(有村架純)と歩(萩原利久)。この名前からして、如何に将棋一筋かがうかがえる。でも、嘘をついて好きでもない将棋を始めた零に、いつしかこの姉弟は勝てなくなる。

出て来る俳優がみんな良い。それはやはり演出が良いということなのかな、と思った。結構普段と違う色合いの役を割り当ててあるのが面白く、しかもよく演じられている。

有村架純の、これまでの役柄にはなかった嫌ぁな感じの女。豊川悦司の弱っちい父親。伊藤英明の肉食系の脂ぎった中年棋士。

棋士はたくさん出てくる。加瀬亮、佐々木蔵之介、甲本雅裕、奥野瑛太、そして、劇中で将棋は指していないが、岩松了、中村倫也ら、それぞれが色とりどりの棋士を鮮やかに演じている。

そして、このデブは誰だったか、声に記憶があるが思い出せない、と思っていたのが零の幼馴染の棋士・二階堂だ。エンディングロールを見て驚いた。なんと、このデブに扮していたのは染谷将太ではないか!

原作があるからデブにするしか仕方なかったのだろうが、しかし、本人が必死で太ったのか特殊メイクと CG で作ったのか知らないが、染谷将太がここまでデブになる必要はあったのだろうか? いや、別に貶してはいない。ただ、驚いた。

そして、零の近所に住んでいていろいろと世話を焼いてくれる女性が出て来る。この魅力的な女の人は誰だったかな、とずっと思っていて、中盤でやっと気づいたのが倉科カナだった。

まだ前編が終わったところなので評価するには早すぎるが、なーんか良い話なのである。零に憎しみを覚えながら、しきりに一人住まいの零を訪ねてくる香子の屈折した感情も、必ずしも悪し様に見せず、ちゃんと多面的に描いている。

零の学校の教師であり良き理解者である林田(高橋一生)の存在も良い。こういう大人の存在が悩み多き子どもたちを救うのである。

というわけで後編が楽しみ。驚いたのは、原作の羽海野チカが、予定していた(つまりまだ連載していない)最終回の筋を大友監督に教えたということ。これはよほどの信頼があるということなのだろう。

ともかく派手な展開はないが、なかなか上手に作られたストーリーである。しかし、前編だけで2時間19分というのは少し長いな(笑)

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