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Sunday, February 12, 2017

映画『サバイバルファミリー』

【2月12日特記】 映画『サバイバルファミリー』を観てきた。

大体において邦画の予告編というものは最後のカットでスタッフを10人か20人一覧で出して終わりである。

ポスターなども用紙の下の方にぐちゃっと小さい字で書いてあるだけのことが多く、作品を監督で選んでいる僕としては大変困るのである。せめて監督名だけでもフォントを大きくするか色を付けてくれないかといつも思う。

ところが、この映画の予告編は珍しく冒頭で「あの『ウオーターボーイズ』や『スウィングガールズ』を撮った矢口史靖」という打ち出し方をしており、僕はその瞬間にこれは観ようと決めていた。

矢口監督は『スウィングガールズ』のあと『ハッピーフライト』『ロボジー』『WOOD JOB! 〜神去なあなあ日常〜』と3本の長編を撮っている。僕はいずれも観ており、決して駄作だったとは思わないのだが、評判という意味ではここんとこパッとしなかった感がある。

その監督をこういう風に打ち出す宣伝ができ上がって来るということは、やはりこの業界にたくさんファンがいるということなのだろうと思う。

さて、矢口監督の作品ではタイトルが英単語2つでできていることが多く、その英単語の切れ目に中黒「・」を入れない主義なので切れ目は分かりにくいが、でも、映画の内容をいつもストレートに表している。

今回はサバイバルである。大停電の話であるが、不思議なことに電池で動いているものまで全く動かなくなる。

どうやら近隣だけの停電ではないと分かったが、一体どこまで行けば電気が来ているのか、テレビもスマホも使えず情報が来ないので全くわからない。

その不思議を究明するといったSF的な要素はない。ただ、電気が止まって右往左往する様を鈴木という一家(小日向文世、深津絵里、泉澤祐希、葵わかな)に絞って描いて行く。

喜劇として笑いたいのなら、笑うポイントの多くはロング・バージョンの予告編に使われているので、そんなに多くを期待してはいけない。笑えるのは笑えるが、ただ笑わせようというだけの作品ではなく、もう少し深いものがあるのだ。

しかし、だからと言って、「電気に頼って生きている現代文明に警鐘を鳴らす」といった大それた作風でもない。

もし、今自分の生活で電気が全く使えなくなったらどうなるかなあ、と考えたときに、あ、なるほど、と思えることが順番に出て来るのである。

水道水の管理にも電気がふんだんに使われているため、やがて家では水も出なくなる。電車も自動車も動かない。会社も学校も、行ったって何もできないので、皆自宅待機を言われる。物流も途絶え、スーパーに食料品も入って来なくなる。

そのうちに「関西以西では停電していないらしい」とのデマが流れ、一家は母親・光枝(深津絵里)の実家の熊本を目指して、まずは自転車で羽田空港に向かう。が、飛行機も飛んでいない。仕方なくそこから4人はひたすら自転車で西を目指す。

生きるためのいろんな知恵や工夫がある。それを4人はいろんなところから学ぶ。

アウトドアが趣味の妙にサバイバル術に長けた家族(時任三郎、藤原紀香、大野拓朗、志尊淳)に出会い、飲める水や食べられる草について教えられる。農家の男(大地康雄)の厄介になって、豚を屠殺して捌くのを手伝い、井戸水を飲ませてもらい、薪で焚いた風呂に入れてもらい、燻製にした肉をもらう。

いちいちなるほどと思う。結構緻密な想定に基づく台本だと思う。

例えばペットの問題がある。人は避難するときペットをどうするか? もちろん可愛いペットのことだから一緒に連れて行こうとする人も多いだろう。でも、そういう人ばかりではない。では、残されたペットはどうなるか?

──そんなことも描かれている。でも、それは大上段に振りかぶって人としての在り方を問うような手法ではない。

一家は川の水を飲んだり、ネコ缶を食べたり、バッテリー補充液を飲んだりして、ある時はひどい目に遭い、ある時は生き延びる。それを観客は笑って観ていれば良いのだと安心していたら、いきなり過酷なシーンになって足許を掬われる感がある。

そして、ああ、なるほどと思う。なんとなくしんみりしてしまう。

観客の度肝を抜いてやるぞというような気張ったカメラワークなどはどこにもない。そういう意味では全くケレン味がない。ある意味これが矢口監督の地の味だと思う。

でも、電気が全く消えている街や車が全く走っていない高速道路など、よくまあこんなロケができたものだと感心した。

さて、こういう映画はどの時点までを描いてどう閉じるかがポイントになる。当然電気が復旧するところまでは描くだろう。その展開が却々按配よかったと僕は感じたが、ここは意見の別れるところかもしれない。

感動の巨編などでは全然ないのだが、僕は悪くない映画だと思った。エンディング・テーマの "Hard Times Come Again No More"(歌:SHANTI、プロデュース・編曲:ミッキー吉野)が妙に沁みるのであった。

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