「キネマ旬報」2月下旬号(2)
【2月6日特記】 さて、一昨日の記事タイトルが(1)なら当然(2)があるはず。ということで、今年もやります。キネマ旬報日本映画ベストテン採点表の分解と分析:
キネ旬の投票は各審査員(2016年度の日本映画の場合は「本誌編集部」を含む64名)がそれぞれ55点を持って、1位には10点、2位には9点、3位には8点、…、9位には2点、10位には1点を投じるシステムです。
僕はこれを毎年、1)何人の審査員が投票したか、2)投票した審査員1人あたりの点数は何点か、を調べて「得点=○人×平均△点」という形に分解してみます。
そうすることによって、a)点数はそれほど高くないけれど多くの審査員が投票した【広く人気のあった作品】と、b)投票人数は少ないけれどそれぞれが高い点数をつけた【思い入れ度の高い作品】の区別がなんとなく見えてくるからです。
統計学的に正しい手法かと問われると心もとないですが、1位から10位ぐらいまでに限定してやるのであれば、そこそこ妥当な傾向が明らかになると僕は感じています。
まずはやってみましょう。2016年度日本映画ベストテンは:
- この世界の片隅に
301点=40人×7.53点 - シン・ゴジラ
240点=38人×6.32点 - 淵に立つ
159点=26人×6.12点 - ディストラクション・ベイビーズ
155点=25人×6.20点 - 永い言い訳
140点=26人×5.38点 - リップヴァンウィンクルの花嫁
135点=22人×6.14点 - 湯を沸かすほどの熱い愛
130点=20人×6.50点 - クリーピー 偽りの隣人
119点=22人×5.41点 - オーバー・フェンス
115点=17人×6.76点 - 怒り
105点=17人×6.18点
さて、ここから言えることは、まず前年の『恋人たち』に続いて今回も第1位の完勝であること。これは僕にはどうにもこうにも腑に落ちませんが。
ただ、今回は2位が『シン・ゴジラ』だけに去年ほどの大差をつけての勝利にはなっていません。
今回は上位のほうではほとんど逆転現象がないのが特徴です。つまり、【広く人気のあった】順に並べても【思い入れ度の高い】順に並べても、ほとんど順位の変更はないのです。
それが覆るのは第5位以降であり、とりわけ『永い言い訳』は【広く人気のあった作品】、『オーバー・フェンス』は【思い入れ度の高い作品】と言えます。
中でも『オーバー・フェンス』の平均点の高さには驚かされます。『この世界の片隅に』に次ぐ第2位ですから。僕も良い映画だとは思ったのですが、僕にはこの映画がそこまで深いものだとは感じられませんでした。この辺りが如何にもキネ旬らしいなあと思います。
そういう意味では『湯を沸かすほどの熱い愛』は、監督の知名度が低く、公開規模も大きくなかった割には、広がり/深さの両方をしっかりと達成した作品であったと言って良いのではないでしょうか。
ちなみに、前回の記事にも書いたように僕が意外に思ったあのアニメ作品は:
- 君の名は。
78点=14人×5.57点
ま、当然のことながら思い入れ度だけであればベストテン圏内なわけですが、その一方で、この作品に64人中の14人しか投票していないとは俄に信じられません。広い人気が獲得できなかったと言うべきか、それともアニメの解る審査員が少なすぎたと言うべきかは別として。
今年はそれほど面白い分析結果は出ませんでしたが、まあ、でも、この手法、面白いと思いませんか? 僕自身は来年以降も継続してやって行くつもりです。。
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