« January 2017 | Main | March 2017 »

Tuesday, February 28, 2017

『蜜蜂と遠雷』恩田陸(書評)

【2月28日特記】 直木賞受賞作。僕に言わせれば、「なんだよ、今頃になって」という感じの直木賞。こんなに派手なパフォーマンスを見せてやらないと直木賞の審査員は彼女の実力を見抜けないのだろうか、という思い。

言葉で音楽を表した小説。それはある意味アクロバティックな試みである。恩田のファンであれば、前にもいくつかこんな試みがあったなと思い出すはずである。例えば『チョコレートコスモス』──これは言葉で演技(芝居)を表した小説。誰にでも書けるものではない。

あの小説では行間から演技が見えたように、この小説ではページから音楽が聞こえてくる(もっとも僕が読んだのは電子書籍だったがw)。

この小説は世界的なピアノ・コンクールである芳ヶ江国際ピアノコンクールの一次予選から三次予選と本選までの模様を描いた小説である。

主な登場人物は3人。

天才ピアノ少女ともてはやされていたのに、母親の死をきっかけに演奏会をドタキャンして音楽から離れてしまっていた栄伝亜夜。ジュリアード音楽院の優等生で、後に亜夜の幼馴染だったと判るマサル・C・レヴィ=アナトール。そして、養蜂家の息子で家にピアノさえなく、誰も名前を聞いたこともなかったのに伝説のピアニストの推薦状を携えて現れた風間塵。

そのほかに、サラリーマン生活をしていたのに諦めきれずコンクールにエントリーしてきた30歳手前の高島明石の姿も加わる。

Continue reading "『蜜蜂と遠雷』恩田陸(書評)"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, February 26, 2017

ナッツ夫婦

【2月26日特記】 夫婦揃ってナッツ類が好きなのである。

僕が好きなのはピスタチオとカシューナッツ。妻が好きなのはやはりカシューナッツ。ほかにアーモンドとかクルミとかもふたりでよく食べている。

それぞれにコレステロールを下げるとか血圧を下げるとか、いろんな効能のある成分を含んでいたりするのはありがたいが、そんなことよりも単に美味しいから食べているにすぎない。

で、ふたりとも好きなのにめったに手にはいらないのがヘーゼルナッツ。昔チョコレートに入っていた記憶があるが、大人になって単体で食べて、初めてその独特の美味しさに気がついた。

ところがこれが売っていない。日本では滅多に手に入らない。仕方なく海外から取り寄せた。

Continue reading "ナッツ夫婦"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Saturday, February 25, 2017

こんばんは、メディア

【2月25日特記】 昨日、一昨日と連日連夜、テレビやインターネット、ソーシャルメディアに関する勉強会/セミナーの類に出席した。東京はともかくこの手の催しが多くて楽しい。

大阪にいた頃と比べて浴びる情報量は10倍以上になったと思う。僕自身もこれまでは活動性の低い人生を送ってきたが(笑)、なんだかちょっとエンジンがかかった感じ。

昨日の夜の催しに行くと、一昨日の催しに来ていた人たちも何人か。──当然そういうことにもなる。しかし、それを「どこに行っても同じ顔ばかり」と言ってしまうのは間違いである。

知ってる人がいて知らない顔もあって初めて交流が繋がって広がるのである。行く場所行く場所で初対面ばかりなら、そこから広がるものは少ないはずだ。

Continue reading "こんばんは、メディア"

| | Comments (2) | TrackBack (0)

Friday, February 24, 2017

映画『愚行録』

【2月24日特記】 映画『愚行録』を観てきた。既に観た何人かから激賞と酷評の両方を見聞きした。そういう映画を観るのはワクワクする。

最初に書いておくと、(あまりあからさまにする気はないのだが)この映画を論ずるにはどうしてもある程度結末に触れる必要がある。全くの先入観なくこれから観に行きたいという方は読まないでほしい。

全般に画作りの巧みな映画だと思った。雨の日のバスの窓外から乗客を映し、前方から後方にパンして行くと主人公の田中武志(妻夫木聡)が座っているという冒頭の撮り方からして面白い。

そして、ミステリものにおける記者=社会正義の担い手、であり、往々にして自分の一方的すぎた正義感に気づいて主人公が落ち込む、という図式から外れて、週刊誌記者である田中がバスの中で転んで足を引きずってみせるという最初の展開が秀逸である。

これからこの物語はどちらに転がって行くのだろうとハラハラさせる。そして、5拍子の BGM が不安感を高める。こういう変拍子の使い方は巧いなと思った。

Continue reading "映画『愚行録』"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Wednesday, February 22, 2017

墓碑銘

【2月22日特記】 本を読んでいたら「墓碑銘」という単語に出くわして、ふと思った。

西洋は良いよなあ、自分の墓に墓碑銘が刻んであったりして。日本人が入るのは個人ではなく家族、あるいは先祖代々の墓だから、個人の銘文なんて刻んでおけないのだ、と。

しかし、待てよ、考えてみたらアメリカの映画やドラマで故人の墓参りをするシーンで墓碑銘が映ることが多いので勝手にみんなそうだと思っているが、本当にみんなそうなのか?西洋には 家族の墓ってないんだろうか?

それに、日本だって極端な話をすれば天皇陵は個人の墓だし、歴史上の人物で個人の墓が残っている人も多い。有名人、金満家なら今でも個人の墓に入れる人はいるのだ。そんなに墓碑銘がほしいのなら、頑張って個人の墓を建てれば良いだけのことだ。

──と思い直してみたのだが、考えてみれば僕は若い頃から西洋個人主義への憧れを抱いていたのは確かだが、さりとて別に個人の墓に入りたいわけでも墓碑銘を残したいわけでもない。ただ、個人個人で埋葬するという社会の在り方が良いなあと思っただけのことである。

Continue reading "墓碑銘"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Monday, February 20, 2017

2/20サイト更新情報

【2月20日特記】 サイトを更新しましたのでお知らせします(このブログではなく、併設している私のホームページ "Wardrobe of Words" の更新案内です)。

今回はレギュラーの言葉のエッセイ1編と音楽エッセイへの書き足しがあります。

言葉のエッセイのほうは、もう何度も取り上げたテーマで、漢語ができるときのそれぞれの漢字の音の変化についてまたしても(笑)書いています。音楽エッセイはいつもの転調名作選への追加です。例によってどの曲を加えたかは書きませんが。

というわけで今回の更新は下記の通り:

Continue reading "2/20サイト更新情報"

| | TrackBack (0)

Saturday, February 18, 2017

Hackathon雑感

【2月18日特記】 会社でハッカソンをやっている。今年で3年目。

放送局という本来新しいもの好きが集まっているはずの場で、なぜだか乗って来てくれない社員が多くて、最初は危ない新興宗教の人みたいな目で見られた。

新しいイベントだけに、ああでないといけない、こうでないといけない、といろいろなことを言われた。

Continue reading "Hackathon雑感"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Tuesday, February 14, 2017

アプリ・オブ・ザ・イヤー

【2月14日特記】 今日、秋葉原UDX に App Ape Award 2016 の「アプリ・オブ・ザ・イヤー」の発表会を観に行って来た。

で、後半のパネル・ディスカッション5連発を聞いていて、「さすがに当たるアプリを作っている人たちはいろんなことを考えてるんだなあ」と感心するところが多く、却って自分の浅はかさに思い至った。

具体的にはたくさんあるが、例えば丸亀製麺のアプリ:

丸亀製麺でうどんを食べてお金を払うと、レシートに QRコードが印刷されていて、客はうどんを食べて店を出てから、その QRコードを自分のスマホでスキャンしてクーポンを手に入れることになる。

顧客がレジでアプリを立ち上げてバーコードを見せ、それを店員がスキャンすることによってポイントが付くシステムが一般的なのに、なんで丸亀はわざわざ客に手間を取らせるのか?

ひとつには、ここにうどんを食べに来る人はあまりゆったり過ごす気のない人たちだから。そんな人たちはレジで長い時間をかけたくないわけで、自分以外の客もさっさと支払いを済ませてくれないとイライラしてしまうのだ。

それだけではない。丸亀製麺は昼の混雑時は30分に100~120人の精算をこなすのだそうで、ここで客が滞留すると店の売上に直結してしまうのだそうだ。

それで、一見不親切に見えても、わざわざ客に自分でスキャンさせる形を採っているとのこと。

Continue reading "アプリ・オブ・ザ・イヤー"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, February 12, 2017

映画『サバイバルファミリー』

【2月12日特記】 映画『サバイバルファミリー』を観てきた。

大体において邦画の予告編というものは最後のカットでスタッフを10人か20人一覧で出して終わりである。

ポスターなども用紙の下の方にぐちゃっと小さい字で書いてあるだけのことが多く、作品を監督で選んでいる僕としては大変困るのである。せめて監督名だけでもフォントを大きくするか色を付けてくれないかといつも思う。

ところが、この映画の予告編は珍しく冒頭で「あの『ウオーターボーイズ』や『スウィングガールズ』を撮った矢口史靖」という打ち出し方をしており、僕はその瞬間にこれは観ようと決めていた。

矢口監督は『スウィングガールズ』のあと『ハッピーフライト』『ロボジー』『WOOD JOB! 〜神去なあなあ日常〜』と3本の長編を撮っている。僕はいずれも観ており、決して駄作だったとは思わないのだが、評判という意味ではここんとこパッとしなかった感がある。

その監督をこういう風に打ち出す宣伝ができ上がって来るということは、やはりこの業界にたくさんファンがいるということなのだろうと思う。

さて、矢口監督の作品ではタイトルが英単語2つでできていることが多く、その英単語の切れ目に中黒「・」を入れない主義なので切れ目は分かりにくいが、でも、映画の内容をいつもストレートに表している。

Continue reading "映画『サバイバルファミリー』"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Friday, February 10, 2017

映画『咲 saki』

【2月10日特記】 映画『咲』を観てきた。

女子高生の麻雀ドラマ。漫画の原作があって、それがドラマ化されて、その続編が映画化されたもの。実写化が発表されたときには原作のファンからブーイングの声が上がったらしいが、いざでき上がってみると結構好意的に迎えられているとのこと。

例によって僕は原作漫画の存在さえ知らなかったしテレビ版も見ていない。さらに最後に麻雀をしたのが何年前だったかさえ思い出せない。

この映画をこれから見ようかと考えている人は基本的にしょっちゅう麻雀をしている人で、恐らく大半が原作のファンだろうから、僕のこの文章は参考にも何にもならないとは思うが、まあ、麻雀やってなくて原作知らない人が見た意見として一応書いてみることにする。

映画は女子高生の麻雀の県大会から始まる。

それまでに登場人物たちのいろんな出会いがあり、いろんな設定の説明があったのでだろうと思うのだが、その辺りはすでに観客は知っているものとしてすっ飛ばされる。時々回想シーンが入るのだが、ごくごく短いシーンなので、この映画で初めて見る人には何のこっちゃ分からない。

でも、これが面白いのである。まるでマンガだ。いや、マンガなんだから当たり前なんだが(笑)

ほんとに馬鹿馬鹿しい。昔の漫画に例えると、『ドカベン』での岩鬼の悪球打ちや殿馬の秘打「白鳥の湖」と同じくらい馬鹿馬鹿しい。で、同じくらい楽しめる(笑)

Continue reading "映画『咲 saki』"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Thursday, February 09, 2017

知的遊戯

【2月8日特記】 今、朝日新聞デジタルの連載で夏目漱石の『吾輩は猫である』を読んでいるのだが、昨日、一昨日の回がとても面白かった、というか、こういうのは僕以外にも面白いんだろうか、こういうものを面白がる文化はまだあるんだろうか、と気になったので書いてみることにした。

一昨日の「192」では迷亭と独仙が対座して囲碁をしている。まず「賭けないとやらない」という迷亭をたしなめて、独仙が陶淵明の詩句を引いてもっとゆったりしないとダメだと言う。

迷亭は「さすが仙人だ」などとテキトーなことを言いながらハチャメチャな碁を打つ。

そのあと、この2人を見た「吾輩」が、なんで人間は囲碁みたいな窮屈なものをするのだろうと深い感慨を述べるのを挟んで、翌「193」では迷亭と独仙の丁丁発止に戻る。

まずは迷亭が司馬遷の『史記』の「項羽本紀」の有名な鴻門之会の場面を引用しながら勇ましく攻め込んで来る。

それに対して独仙は碁石を「こう継いで置けば大丈夫」と言いながら、「継ぐ」からの連想で、唐の文宗の句に柳公権が継いだ連句を引用する。それを受けて今度は迷亭が「継ぐ」を「撞く」に掛けて「撞いてくりゃるな八幡鐘を」と俗謡で返す。

すると独仙は無学禅師の言葉を引いてさらに切り返す。その手に慌てた迷亭は「待った」をする。独仙が「ずうずうしいぜ、おい」と言うと、迷亭は「Do you see the boy か」と来る。これは読んでいても俄に解らなかったのだが、「ずうずうしいぜ、おい」と「Do you see the boy 」がシャレになっている。

そのあと2人のやりとりは、歌舞伎十八番や禅語まで引きながらさらに続いて行く。なんとも凄まじい知的遊戯ではないか?

で、僕はそれをものすごく面白く思ったのだが、僕以外の読者もおんなじように面白がって読んだのかな、と気になったのである。

Continue reading "知的遊戯"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Tuesday, February 07, 2017

僕がいる

【2月7日特記】 facebook にはお節介な機能がいくつかあるが、何年か前の今月今日の自分の投稿を引っ張り出してくるというのもそのひとつだ。

だが、これはこれで結構楽しい。

僕はなんでもかんでも忘れてしまうタチで、何年か前に自分が書いたものを見せられても、「そうそう、こんなこと書いたぞ」ばかりではなく、「ああ、こんなこと書いたかも」どころか「え? こんなこと書いたっけ?」と思うこともしょっちゅうある。

そういう昔の自分、いくら忘れても自分でしかあり得ない自分に再び巡り会えるから楽しいのだ。

例えば、これは今朝出てきた、5年前の今月今日の僕の投稿。今回の場合、ここには今とちっとも変わらない自分がいる。

Continue reading "僕がいる"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Monday, February 06, 2017

「キネマ旬報」2月下旬号(2)

【2月6日特記】 さて、一昨日の記事タイトルが(1)なら当然(2)があるはず。ということで、今年もやります。キネマ旬報日本映画ベストテン採点表の分解と分析:

キネ旬の投票は各審査員(2016年度の日本映画の場合は「本誌編集部」を含む64名)がそれぞれ55点を持って、1位には10点、2位には9点、3位には8点、…、9位には2点、10位には1点を投じるシステムです。

僕はこれを毎年、1)何人の審査員が投票したか、2)投票した審査員1人あたりの点数は何点か、を調べて「得点=○人×平均△点」という形に分解してみます。

そうすることによって、a)点数はそれほど高くないけれど多くの審査員が投票した【広く人気のあった作品】と、b)投票人数は少ないけれどそれぞれが高い点数をつけた【思い入れ度の高い作品】の区別がなんとなく見えてくるからです。

統計学的に正しい手法かと問われると心もとないですが、1位から10位ぐらいまでに限定してやるのであれば、そこそこ妥当な傾向が明らかになると僕は感じています。

Continue reading "「キネマ旬報」2月下旬号(2)"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, February 05, 2017

2/5サイト更新情報

【2月5日特記】 サイトを更新しましたのでお知らせします(このブログではなく、併設している私のHPの更新案内です)。

今回もレギュラーの言葉のエッセイ1編のみです。昨年大流行した PPAP からヒントを得て書きました。

というわけで今回の更新は下記の通り:

Continue reading "2/5サイト更新情報"

| | TrackBack (0)

Saturday, February 04, 2017

「キネマ旬報」2月下旬号(1)

【2月4日特記】 『キネマ旬報』2月下旬号が発売されたので、今年もその全ランキングと、僕のブログの記事「『キネマ旬報ベストテン』の20位以内に入ってほしい邦画10本」との突き合わせをします。

1位から10位についてはすでに 1/10 の記事に書きました。

今回、僕の興味の焦点のひとつは、ベストテンから漏れた『君の名は。』は一体何位に入っているのか?であり、もうひとつは公開が早かった『ピンクとグレー』が果たしてどのくらい評価されているかということでした。

後者については後述しますが、前者は予想通り20位以内ではありますが、第13位というのは予想を下回っていました。

何度も書いているように僕は2016年のベストは『シン・ゴジラ』だと思っていて、記録的な興行収入をおさめた『君の名は。』をそれほど極端に称揚しているわけでもないのですが、これはちょっと残念です。

『この世界の片隅に』がぶっちぎりの1位、『聲の形』が第27位というのと合わせて考えると、申し訳ないけれど審査員のアニメを評価する眼にちょっと不満を覚えます。アニメを観る際に画の力と美しさを評価せずにどうするのでしょう?

さて、今回はバラバラと書き始めてしまいましたが、例年通りキネ旬ベストテンの第11位以下、順位に沿って僕が観た映画を拾ってみましょう。

Continue reading "「キネマ旬報」2月下旬号(1)"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Thursday, February 02, 2017

快眠度分析

【2月2日特記】 睡眠アプリ Sleep Cycle のデータを見ていると、旅先で快眠度が落ちるのは何故だろうと思う。

ちなみに、何度か書いたように、このアプリで測定された快眠度は、実際の体感と割合一致する。つまり、朝起きて「ああ、よく寝た」と思ったときは一般に快眠度も高い。

Sleepcycle311feb17

だが、旅先での快眠度は自分の印象より低く出ることが多い。

例えば、1/30 の快眠度は 76%、大阪に出張してホテルに泊まった 1/31 は、割合ぐっすり眠れたと思ったにも拘らず 44%。東京に戻った翌 2/1 は 75%。

じゃあ、前に 60% 未満だったのはいつだろうと調べてみたら、このときもそれほど眠れなかったという気はしなかったのだが、年末に箱根のホテルに泊まったときの 55% である。

我ながら、そんなにおウチが良いのかい?と不思議に思う。

Continue reading "快眠度分析"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

« January 2017 | Main | March 2017 »