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Saturday, January 14, 2017

映画『僕らのごはんは明日で待ってる』

【1月14日特記】 映画『僕らのごはんは明日で待ってる』を観てきた。瀬尾まいこの小説が原作であることは後から知った。僕が見に行ったのは監督が市井昌秀だったから。市井昌秀監督の前作『箱入り息子の恋』がとても良かったから。WOWOW で放送した『十月十日の進化論』も良かった。

あの映画は『逃げるは恥だが役に立つ』で去年大きな話題になった星野源を主役にしていた。市役所勤めの異常に几帳面な35歳・童貞の恋のお話で、今から思うとまるで逃げ恥の前日譚のような映画だった。

そして市井監督は今回もやや変わったタイプの人間を主人公にしている。乱暴に言ってしまうと、男も女もフツーの人とはちょっとずれた変わり者カップルの話。自分がそうだから、ということもあるが、僕はこういうのにとても惹かれてしまう。

映画はこのカップルの高校1年から就職までの7年間ほどを描いている。

葉山亮太(中島裕翔)はウルトラ・ネガティブな発想の持ち主。いつも人が死んだ小説ばかりを読み、教室でひとりたそがれているのでクラスに友だちがひとりもいない。

みんなが敬遠して話しかけたりしない亮太に、しかし、クラスメートの上村小春(新木優子)はお構いなしに話しかけ、ずけずけと意見したりする。そんな小春はウルトラ・ポジティブな発想の持ち主だが、どこか根気が続かないところがある。

亮太は兄を病気で亡くしており、小春は父親が誰か知らず母親には棄てられて祖母と2人で暮らしている。そういう経験や環境が今の彼らを作っている。

だが、小春は亮太の上辺を見るのではなく、亮太の内面の、しかも他の人は誰も評価しないところを評価しており、実は中学時代から亮太のことが好きだったのである。

この新木優子という女優、僕は今まで全く知らなかったのだが、筆舌に尽くしがたいほど良い。

まずめちゃくちゃ可愛い。造作だけでなく表情が可愛い。そして、小春の明るいところ、前向きなところ、意外に頑固なところ、健気なところなど、全ての側面を余すところなく演じきっている。僕は呆けたように見入ってしまった。

ところで、『箱入り息子の恋』では出だしは蛙の画だった。当然その時点ではなんで蛙なのかさっぱり分からなかった。今回は屋上の遊園地にある望遠鏡(コイン入れるやつ)である。しかも最初の画は真上からのショットで何が映っているかさえ分からない。

それがカメラがぐるっと回ってさーっと引いて初めて屋上にいると判る。でも、ここでもまだこれが何なのか分からない。今回も市井昌秀の脚本はこういういろんなものが後から繋がってくる。ものすごく肌理が細かく、ものすごく巧い。

そして、カメラは時々、まるで役者と勝負するみたいに、動きを止めて長い芝居をさせる。屋上の遊園地で亮太が小春の親の職業を訊いて、そこで初めて小春には親がいないと知るシーン。

病室で入院中の型破りな婦人(片桐はいり)の話を聞きながら、「俺はバカだった。今漸く分かった」と話す独白のシーン。

どのシーンもどのカットも、本当に人間の息吹が感じられる美しい画ばかりである。ポカリもカーネル・サンダースも、フライドチキンを食べて汚れた指も、全てが次の展開に繋がって行く。この訳の分からないタイトルも、見終わったらぼんやりと納得してしまう。

えみり(美山加恋──あまりに大人になっていたのでびっくりした)が亮太の部屋を出て行くシーンはずっと亮太のワンショットで、彼女が荷物を取って部屋を出て行く音だけを聞かせる。──同じような手法は前作にもあった。

そして、そういう技法だけの問題ではなく、話自体が素敵としか言いようがないくらい素敵なのである。

悩みや負い目を持つ人間という存在に対してとにかく優しい。愛おしいような脚本である。驚異的に良かった。胸が熱くなった。そして久しぶりに映画を観て落涙した。

Hey! Say! JUMP の中島裕翔主演のアイドル映画だとなめてはいけない。考えてみればこの人の前作『ピンクとグレー』もとても良かった。

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